新しい白書の特徴は、今回初めて建設業とメディア業界に特に注目を置いていることだ。これら業界では2010年から2015年にかけて、過重労働が原因で脳・心臓疾患、精神障害の最大件数が記録されている(統計全データは6頁および7頁に記載)
小城氏:建設業のみならず、例えば宿泊業あるいはマスメディアでオリンピック・パラリンピックを迎えるにあたりまして過重労働となることが懸念されていることはその通りでございます。しかし、今回の調査分析の中ではそういうことは明らかにしていることではございません。なぜかというと、目的としてそれを分析していませんでした。それでもオリンピック・パラリンピックに向けて過重労働は懸念されますので、過労死白書を活用しまして問題への取り組みを進めるように我々は周知を広めることを考えております。
スプートニク:スウェーデンやドイツのようなヨーロッパの国では労働時間を減らしてそれによって労働効率を高めるというような経験があります。日本はその経験を参照していますでしょうか、いつか導入することは可能でしょうか。もしくは、日本人は違うメンタリティーでそれとも他の理由で日本にはそれは合わないという考え方があるでしょうか。
小城氏:我が国の長時間労働につきましては、これを速やかに是正するのが課題となっていまして、もちろんヨーロッパの取り組みも参考にしつつ、その対策を進めておりまして、先程申し上げました、基本改革制度の導入ですとか、努力義務につきましては、法律改正を昨年行ったところです。これまでは時間外労働の法的規制につきましては、実質的には法律上の規制はありませんでした。三六協定といいまして、労使が締結すれば、その範囲内での残業は出来るという仕組みとなっていましたが、これを改めまして、罰則付きの上限規制を設けたところです。ただ法律の規制だけでは生産性向上につながりませんので、例えばICT等を活用した生産性向上の取り組みを推進する助成金でありますとか、あるいは、取り組み事例についてのコンサルティングを実施するなどして、生産性向上についての啓発、あるいは促進を進めているところです。
「長時間労働を減らすに当たって日本の社会、そういった企業文化・風土は背景にあるか、ご指摘の問題認識につきましては、これまでの働き方、休み方の見直しがもちろん大事です。
企業における働かせ方の文化、そういったものから直していかなければいけないところです。企業の経営者トップにそのような意識を持っていただきたいというところから取り組みを進めているところでございます。
労働者側におきましても中間管理職も含めまして長時間働いているということは評価されやすいという文化もあると思いますし、また周りの方が休んでいないあるいはまだ残業しているのに自分だけは帰ってどうかという意識も強いというところもあります。その意識変革も当然必要であると思います。昨年の法改正では労働時間の適正な把握を義務化するということを法制化しましたが、法律改正以前のところの意識を変えていただく必要があります。」
「非常に答えづらいです。ご指摘いただきました通り、霞ヶ関につきましては未だに長時間労働という実態は本当です。そうした中で、先程職場風土と申し上げましたが、例えば職場の全員が一緒に、例えば長時間残業しなければいけないのかと言うと、そういうことは必ずしもないわけです。例えば、国会会期中であれば、国会対応とかあるわけですが、そういった場合でも誰かキーになる人がいれば、全員が残る必要がないとか、あるいは当然、効率化というものも進めていかなければならないということで、もちろん、ペーパーレス化なども含めまして、取り組みを進めているところです。ただ、実態として、あまり、大きな成果として皆様方に胸を張って言えるかというと、そういうところがまだこれからでございますけれども、ただ、個人的なことで申し上げますと、私どもが入省した間もなくの頃と今とでは、長時間労働の実態はかなり改善してきているのはあるかと思います。」
大綱の目標は次のようになった:
- 週労働時間以上の雇用者の割合を6.9%から5%以下に(令和2年まで)
- 年次有給休暇取得率を51.1%から70%以上に(令和2年まで)
- 勤務間インターバル制度について、労働者30人以上の企業のうち
- 「制度を知らない」と回答する企業比率を26.6%から20%未満に
- 制度の導入企業割合を1.8%から10%以上に(令和2年まで)
- メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を58,4%から80%以上に(令和4年まで)
- 仕事上の不安、悩み又はストレスについて職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を72.5%から90%以上に(令和4年まで)
- ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場割合を51.7%から60%以上に(令和4年まで)