ロシアは中国に対し、ミサイル攻撃警告システムの開発に協力する。プーチン露大統領は第16回ヴァルダイ会議の討論においてそのように発言し、「これは大変大きなことだ。中国の防衛能力を大幅に、根本的に向上させる。現在このシステムを持っているのはアメリカとロシアだけだ」と述べた。
ミサイル宇宙防衛システムの構築を担当する国家間企業「ヴィンペル」のセルゲイ・ボヨフ社長は、現在、同企業の専門家らが中国のミサイル攻撃警告システムのシミュレーションを行っていると伝えた。
パワーバランス
中国は公式に、無条件の核の先制不使用を宣言している。しかし現在まで中国には完全な形でのミサイル攻撃警告システムはなかった。そのため中国は首根っこを掴まれ、敵からの一発攻撃で終わる可能性もあった。今後、ミサイル攻撃警告システムを展開することで中国の報復あるいは迎撃能力を大きく向上する。このような可能性は、ソ米関係において機能していた相互の核抑止の基礎となる。これで中国と米国の核パワーは互角になり、さらに、極東においては中国・ロシアの軍事能力と、米国・日本の軍事能力がより拮抗しつつあると言える。
本分野におけるモスクワと北京の協力は既に何年も続いているが、ロシア大統領がこれを公表したタイミングが今であることに注目したい。間違いなく、最大の原因は今年8月にアメリカがINF条約(中距離核戦力全廃条約)を脱退したことだろう。アメリカはこの決定に関して、中国の抑止を理由の一つとしている。
INF条約が失効した今、アメリカの地上発射弾道ミサイルおよび巡航ミサイルがこれに加わる可能性がある。問題は解決を要しており、その解決方法が公表されたのだ。
同時に、ミサイル攻撃警告システムは中国による独自のミサイル防衛システム構築も含んでおり、露中の軍事関係者は既に2回、ミサイル防衛共同コンピューターシミュレーションを実施済みであり、3回目が準備中であることを考えると、本分野の協力は露中の軍事・政治的幹部の関心の範疇であると言える。
ロシアにメリットは?
元ロシア防空隊副司令官のアレクサンドル・ルザン氏は、「このような協力は、統一情報空間および中国のレーダーによるデータ共有が構築されれば東方からのロシアの安全保障はさらに確保され、その意味で重要だ」と述べている。ルザン氏は、「ウラジオストクと沿海州は守られているが、“深層”にはなにもない」と語った。
というわけでクレムリンはあらためて、軍事分野における相互依存に基づいた、中国との戦略的パートナーシップの内容深化に周到に取り組んでいることをアピールした。