モスクワで予定されている会談の議題には、共同経済活動問題を含む両国の政治および経済協力が挙がっている。しかし中心テーマとなるのは平和条約締結に関する問題だろう。この問題に対するロシアと日本のアプローチにはこれまでと同じく根深い、根本的な相違が残っている。
「平和条約がないのは時代錯誤」であり、この状況は修正する必要がある、とプーチン大統領は2016年12月の日本テレビへのインタビューで語った。しかし今年6月の「ロシア1」テレビでは、大統領の口からは「南クリル諸島のロシア国旗は決して降りることはない」という言葉が出た。日本にとって平和条約締結は領土問題解決、すなわち国境線の変更に直結している。この状況に対する自身の見解をモスクワ国立国際関係大学ドミトリー・ストレリツォフ教授は「スプートニク通信」に次のように語った:「状況は行き詰まっています。平和条約に関する対話継続の合意があり、それは両国首脳が表明したもの。ということはそれを順守しなければならない。一方で両国の立場はお互いにかけ離れていて、近くなる兆候は全くない。私が驚いたのは、ラブロフ外相が日本による第二次世界大戦の結果認識と1956年共同宣言を関連付けたことです。実際には共同宣言にはそのようなものはありません。もしかしたら調印の際に何らかの口頭の合意があったかもしれない。しかしそれは全く別問題です。いずれにしても状況は依然として複雑で矛盾したままであり、今日の段階で順調な解決の見通しはありません。しかし出口は探さなければなりません。双方が“面目を保ち”、二国間関係の悪化を防ぐためには。」
ストレリツォフ教授:「問題をデッドポイントから動かすことができるのではと感じたのは2012年です。双方でオフィシャルに“引き分け”公式という言葉を出し、支持を得ました。その時は何らかの妥協点を見出そうという双方の意欲が明らかにありました。政治的意思であれ政治的勇気であれ、何らかの解決策に持っていくチャンスがあったと思います。当時は大統領支持率も最高水準にあり、ロシアの経済状況も遥かに良かったのですから。ロシア社会がいかなる妥協に対して否定的であっても、まさに1956年共同宣言に基づいた問題解決が可能だったと思います。残念ながら現在の状況は全く異なり、妥協的解決の可能性の範囲は極めて狭いのです。」
スプートニク:それでも、両国首脳の関係がこれほど信頼的であったことはかつてありません。これは複雑な問題解決には重要なファクターなのでは?
9月11日外務大臣に任命された茂木敏充氏にとって、このポストでのロシア訪問は初めてとなる。ハーバード大出身者であり、経済再生担当大臣を務めた茂木氏は米国との厳しい貿易協議において卓越した交渉人という評判を得た。将来の首相と称されることもある。茂木敏充氏は平和条約交渉に弾みをつけることができるだろうか。解決策を探るにあたり説得力ある論拠を見出すことができるだろうか。答えは間もなく分かる。