現代の大都市の住民は慢性的な睡眠不足に苦しんでいる。睡眠不足は、学校の授業が朝の8時か8時半に始まる学齢期の子供たちにとって特に危険だ。そこで、ドイツの研究者らは、同国西部アルスドルフ町のギムナジウム(中等教育機関)の高学年の生徒に、始業時間が選択できる柔軟な時間割で学校生活を送らせる実験を行った。また、このギムナジウムはドルトン・プラン、すなわち、それぞれの生徒に細かく対応した教育システムを行っている。
実験では、生徒一人ひとりに始業時間を8時にするか、9時にするかの選択権を与え、このスケジュールを9週間続けた。研究者らは3学年分の生徒の体調や成績に関するデータを収集するため、実験の全期間を通じ、子どもの手首に活動と睡眠の質や時間を測定するブレスレットを装着させ、新スケジュール導入前の3週間と、導入後の6週間のデーターを分析した。
実験では、この柔軟な時間割で過ごした97%の生徒がよく寝ており、平均睡眠時間も長くなっていることが示された。さらに、授業中の疲れも減り、集中力も高まり、放課後は自宅で過ごす時間が増えた。また、この研究では生徒の認知能力の改善が、また手首のブレスレットは夜間の睡眠の質が向上したことが明らかになった。
また実験では、通常の開始時刻より1時間遅れの9時に登校した生徒は被験者全体の39%に過ぎなかったが、その全員に体調や成績の向上が見られた。以上の結果を踏まえて、研究者らは、生徒たちの健康に良い影響を与えるのは、授業の開始時間の変化というよりも、むしろ、内なる自由、すなわち、1日のスケジュールを柔軟に管理し、目覚ましを使わず自然に目が覚めるようになる可能性と結びついていると結論付けた。