連携協力の覚書の枠内では、文化、教育イベントや展覧会、セミナーの共同開催、専門家らの交換などが計画されている。初回イベントはすでに2月11日にも予定されており、モスクワと日本の子どもたちがテレビ会議に参加する。2回目のイベントは3月にソ連、宇宙探査の開始をテーマに「そらはく」で行われる展覧会だ。
「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」の松井孝典館長は、ロシアの3つの博物館と同時に連携協力を組むことで、2021年4月に迎えるユーリー・ガガーリンによる初の有人宇宙飛行60周年を記念した共同プロジェクトを実現することが可能となったと語っている。
千葉工業大学惑星探査研究センターの所長も務めておられる松井館長は、スプートニクからの独占インタビューに答え、ご自身の宇宙への関心は小学生の頃から始まったこと、そのきっかけとなったのがソ連の地球発の人工衛星の打ち上げと世界初の有人宇宙飛行だったと語ってくださった。
松井孝典氏:若いときにまさにスプートニクとかガーガーリンを見て、(ああこういう宇宙という分野に行こうかな)と思ったぐらいですから、ちょうど小学校からですよね。最初は1957年、人工衛星『スプートニク』の打ち上げの時にそう思いましたね。
スプートニク:千葉工業大学惑星探査研究センターのサイトの所長のページに松井さんの「地球上だけではなく宇宙にも生命というものは、たくさん存在するはずだと思っています」というお言葉が書かれていますが、21世紀中に人類は宇宙に生命の痕跡を見つけ、地球の生命の誕生の謎を解くことができるでしょうか?
松井孝典氏:出来ると思いますよ。今系外惑星といって、太陽系以外の惑星の、例えば大気の観測とかできるようになりましたから。例えば、酸素に似たものがあるところは沢山あって、そういう惑星が見つかれば生命がいるだろうということになります。太陽系で何かを見つけても、そこの天体の上で誕生したものだと判定するのは難しいですよ。なぜなら飛んできた探査機には地球上の微生物がいっぱい付いていますからね。系外惑星ならばこれは確実に地球以外の、他の生命体って言えるじゃないですか。宇宙の成り立ち、太陽系成り立ち、地球の成り立ち、生命の成り立ちを全部研究して発言している人は少ないでしょう。私をおいて、数人かしかいないと思いますけど…。
スプートニク:人類は自分の住んでいる地球だけでなく、地球の周辺もかなりの程度汚してしまいました。近未来に月や惑星への飛行が予定されていますが、人類がそこをゴミだらけにしてしまう心配はないのでしょうか?
松井孝典氏:遠い宇宙にいくというのはなかなか難しいので太陽系の中を飛行していますでしょう。ですからもう、太陽系の天体をごみで汚してるという言い方ができますね。探査機とは基本的にごみですから。
スプートニク:変な質問で申し訳ないのですが、もし松井さんが地球より文明の進んだ惑星におられたとしたら、こんなにも互いに争い、新型兵器の開発に熱中している地球の住民と接触したいと思われますか?
松井孝典氏:科学技術がどんなに進歩しても、欲望など、人間の持っている本質をコントロールすることは非常に難しい。最後までそういう問題が残ると思います。聖人君子ばかりが科学技術を発達させるわけではないですからね。おそらく科学技術が進展する前に文明は行き詰まる、と思っています。
スプートニク:宇宙開発における国際協力の役割をどう評価されますか?
松井孝典氏: これは国際協力で行う以外、道はないだろうと思っています。 一国でやるにはあまりにも巨額のお金がかかる。それに宇宙には別に日本人だとか、アメリカ人とかロシア人が行くわけじゃなく、人類として行くわけですから。国際共同でやるというのは、本来の道だと思っています。
スプートニク:2020年は数か国が一斉に火星飛行計画を発表しています。日本のJAXAも火星計画がありますか?
松井孝典氏:もちろん見込みはありますよ。日本はもう行くことが決まっていますから。火星本体じゃなくて、フォボスという衛星の方ですけどね。そこに探索機をおろして、サンプルを持ち帰るんですよ。これは世界では初めてですから。日本が世界で初めて火星領域からサンプルを持ち帰るということをやります。これは今のところ2026年に打ち上げる予定ですけど。
インタビューの締めくくりに松井館長は日本が火星の衛星から持ち帰るサンプルの研究にロシア人科学者も加わってほしいと期待を表した。松井氏はまた、自分が子どもの時にそうだったように、日本とロシアの博物館が互いに協力しあうことで若者の宇宙研究への関心が高まることを望んでいる。