なぜ今、漁業分野の協力が必要か?
マルティノフ氏は「日露間では、それまでに長期間にわたる協力関係があったにも関わらず、2000年代初頭から実質的に、漁業分野で一緒に何かに取り組むということがなかった。」と指摘する。
マルティノフ氏は日露間の漁業分野の協力によるポテンシャルはもっと大きいもので、それを実現することにより、両国関係に良い影響を与えると信じている。将来的には、イワシやニシン、イカ、カタクチイワシ、シシャモの漁を共同で行なったり、新しい技術を共同で発展させることができるかもしれない。
漁業分野の協力に、政治はネガティブな影響を与えるか?
スプートニク:2018年、魚加工品の生産は記録的な8800トンにも達しました。しかし2019年は6600トンと大幅に落ち込んでいます。その原因として『日本の漁師の消極性』と示されていますが、これは二国間関係の政治的背景と関係があるのでしょうか、特にクリル諸島近辺で日本の漁船が定期的に拿捕・連行されていることと関係がありますか。
地球温暖化と環境問題は、魚の個体数減に影響しているか?
マルティノフ氏:それぞれの魚には快適な水温があり、温暖化は魚の個体数や漁の状況に常に関係している。しかしひとつの説明があり、それは自然発生的な自然のプロセスに関係している。漁業において、魚の群れの規模には周期的な性質がある。 ちょうど今なら、サンマの蓄えは減少している。なぜなら極東イワシが来たからだ。この現象は25年から30年前にもあった。 これらの魚は同じようなものを食べて生きているので、イワシがサンマの分も食べてしまい、サンマが減っている。 なので今、日本側に、もうすぐとても多くなるだろうイワシの漁獲を提案したいと思う。
協力関係の規模について
マルティノフ氏:協力関係の規模感を評価するために数字を挙げてみる。学者によれば、イワシの数は、600~800万トンまで時を置かずに増加するだろう。これが意味するのは、自然界に悪影響を与えない形で、今に比べて200万トンほど多くイワシをとることができる、ということだ。現在、ロシア全体での漁獲量は500万トン。そう考えると、この増加分というのはかなり大きい数字であることがわかる。しかもイワシだけでだ。
しかもイワシから作れるのは食品だけではない。イワシは脂がのっていて、良質の脂であるオメガ3ができる。脂は獣医用にも医療用にもなる。それに我々には、イワシから様々な種類の洗剤を作る技術もある。農業に使える魚粉や養鶏場のエサも生産できる。これについては中国やその他の国も興味を示している。
漁業分野での関係強化は、1月16日にベルリンで交わされた「ロシア極東の農業及び水産業の生産性向上に係る日露共同プロジェクト」の協力覚書だ。マルティノフ氏の訪日にあわせて行なわれた、日露共同での漁業産業に関わる代表団の会合は通算3回目となった。これまでの2回はロシアで開催されていた。