国際保健機関(WHO)および感染対策の専門家らは、感染症の予防を進める国々がその拡大を管理できなかったことから、北朝鮮に感染症が広がらなかったという事実に驚きを露わにした。北朝鮮での新型コロナウイルス発症に関するデータがないということは、約2600万人の国民の誰か1人は感染したのではないか、または当局が情報を隠蔽しているという当惑や疑惑を呼んでいる。元WHO顧問でユニセフ北朝鮮のナギ・シャフィック氏の言葉を引用し、『ビジネス・インサイダー』誌は、「国内では薬が不足している。私は実際には彼らが拡大に直面したのではないかと心配している。彼らにとってそれは深刻な事態だ」と報じた。
テレビチャンネル「フォックス・ニュース」に対し、韓国駐留米軍司令官のロバート・アダムス氏は、「北朝鮮は閉鎖された国のため、発症例があるのかどうか私たちは断定的に話すことはできません。しかし、私たちは、感染者は存在すると完全に確信しています」と語った。
同時に、北朝鮮メディアは国民に向け、積極的な啓発キャンペーンを開始した。キャンペーンでは、新型コロナウイルスとはなにか、感染リスクを下げるためになにをすべきかが説明された。2月16日の金正日朝鮮労働党委員長の誕生日も含め、大規模なイベントが中止された。同委員長の誕生日は非常に質素に開催された。しかし、3月9日には、1月31日以降はじめて平壌からウラジオストクに航空会社「高麗航空」の航空機が到着した。同機には、ロシア人のほかに、平壌での任務を一時的に停止したドイツやフランス、スイスの外交使節団や、また、自国で検疫期間を過ごすことにしたポーランドやルーマニア、モンゴル、エジプトといった外交官とその家族が搭乗した。
北朝鮮政府が着手した断固たる措置は、「スプートニク」と平壌のロシア大使館で確認がされ、大使館のサイトで紹介された情報が注視された。「例外なくすべての国家機関が、対伝染病中央本部の指示に完全に従うことが義務付けられた。保健機関は、衛生普及活動や対伝染病活動の強化、呼吸系疾患や発熱のある患者の明確化、診断や必要な治療の実施を行っている」。
北朝鮮の医療は症状が軽度の患者の大部分を援助できる能力がある。しかし、この医療は、新型コロナウイルスが重症化した患者に対しては無力であると、ロシアの韓国学者でソウル大学のクンミン・アンドレイ・ラニコフ教授は指摘する。
3月17日、過去2ヶ月ではじめて北朝鮮の金正恩国務委員会委員長が、公の行事に出席し、平壌の中心に近代的医療機関を建設する指示を行ったと、朝鮮中央通信が報じた。この報道に関連し、韓国の聯合ニュースは、一般の労働者を前にした北朝鮮の最高指導者の演説は、新型コロナウイルスのパンデミックが世界で拡大し、また、制裁圧力の長期化の中で医療インフラの環境改善を迅速に行うことが可能だとする北朝鮮指導部の意向をデモンストレーションするものだったと指摘した。
また、米国のドナルド・トランプ大統領は、金正恩委員長に書簡を送り、新型コロナウイルス感染への対応で協力し合うことを呼びかけたと報じられた。同大統領は2国間関係の発展に関する自身の計画を提案した。トランプ大統領によれば、「深刻な感染病の脅威」から国民を守るために金正恩委員長が行った努力に感銘を受けたという。