「私たちは互いの顔に向かってくしゃみや咳をしている」
しかし、WHOを批判しているのは米国だけではない。日本の財務大臣で副首相でもある麻生太郎氏はWHOを、世界の公衆衛生を守る力がなく、中国のいいなりになっていると非難した。麻生大臣は「世界保健機関」ではなく「中国保健機関」と改名するのが適切だと思っており、中国が発表する感染者数は「信用しないのが正しい」と発言した。
著名なオーストラリアのコラムニスト、ローワン・ディーン氏は、テレビ番組「スカイ・ニュース」で、「明日」にもWHOを脱退することを国に要請した。その理由は、WHOは「中国人のためのプロパガンダの手段として積極的な働きをしている」ということだった。同氏は、保健に取り組む世界的な機関は必要だが、しかし、それは「評判が絶望的に損なわれた」WHOである必要はないと強調した。
こうした中、1月27日にスロべニアの大手新聞「DELO」が発表した警告はほとんど注目を集めることがなかった。「残念ながら、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行への対応問題で重要な役割を担ったWHOは、今回、深刻な過ちを犯したことが、日々すべて明らかになっている。グローバリゼーションの時代に世界は狭くなった。私たちは互いの顔に向かってくしゃみや咳をしている。WHOが突然、中国に寛容を発揮し、そのためにウイルスを危険なカテゴリーに分類しないと決めたのであれば、それを行い、警告を呼びかける責任は中国にある。ただし、遅すぎる事態でなければいいのだが」。
「時宜を得ない、反社会的なもの」
WHOが多くの批判に晒されたのはチェルノブイリ原発の事故後もそうだった。当時、人体への放射能の影響の結果を故意に過少報告したことから、WHOはメディアのみらなず、世界中の多くの医学会から叩かれた。WHOの統計では、事故による医学的な後遺症として認められたのは甲状腺ガンだけだった。ロシア血液学センター主任研究員のニキータ・シュクロフスキー=コルディ氏は、「スプートニク」に当時の状況について、次のように説明している。
今日の状況に関しては、中国は依然として全体主義を貫いているとはいえ、インターネットがあるために国が嘘をついても効果は減ります。一方、WHOの専門家らも人間です。信頼性の高い知識を十分に持っていなければ、誤った結論を出すおそれはあります。
現在、新型コロナウイルス対応の最終的な正しい結論は誰にもわからないのです。それにも関わらず、WHOの出した結論は、世界の状況の理解が高い水準であることを示しており、またその勧告は全人類が達成した最も重要な成果であるといえます。そしてこの複雑な状況の中でWHOを弱体化させることは、時宜を得ない、反社会的な行為と私は思います。」
2005年、WHOは国際保健規則の改正を行った。同規則は各国に対し伝染病の流行時に特定の方法で行動することを義務付けている。改正のきっかけとなったのは、2003年にSARSが流行した際に信憑性の高い情報が中国から提供されたのがあまりに遅かったことにある。