「フィギュアのキャリアが上がらない状態では、彼女の心中は穏やかではないだろう。ある時点ではトルソワはシェルバコワやコストルナヤをリードしていた。トルソワはジュニアの世界チャンピオンで、誰よりも優れていた。(中略)その後、(同じ門下生の)ライバルが彼女を倒した。」
グーシン氏によると、トルソワはトゥトベリーゼ門下のプリマ(バレエ団の最上級の主役ダンサー)ではない。このことがトルソワを傷つけていた。
「これは心理学で言うところの『(私は)唯一の存在じゃない。(私に)しかるべき注意が注がれていない』という状態だ。メドベージェワもそうだった。」
「トルソワはどこへ? プリマになれるところに」
グーシン氏はプルシェンコについて「コーチを務めたことはなかったし、この先もない。彼はマネージャーだ」と分析する。
「偉大なアスリートだからといって、即コーチになれるわけではない。全てのスポーツにおいて最高のコーチというのは元スター選手ではなく、中レベルの選手だった。プルシェンコはフィギュアのスーパースター。彼は決して偉大なコーチにはなれないだろう。」
グーシン氏は、トルソワのケースでプルシェンコの行動戦術を「スポーツ上のジャッカル」と評した。
「彼は、有望な選手が(トゥトベリーゼ・チームから)『今にも落ちそうになっている』のを見ている。自分(のグループ)にはそんな選手はいない。なんとか手に入れたい。」
「トルソワがいく先では『ここでは一番はおまえだよ。みんながおまえをとりまくよ』という状況が約束される。これをプルシェンコが作り出すのだ。」
トルソワの離脱はトゥトベリーゼにとって損失か?
トルソワ移籍は確かにスキャンダルだった。だがグーシン氏は、これによって出来上がった状況はスポーツにとっていいことだと指摘する。
「『ジャッカル』という言葉に表されたような状況があったとはいえ、プルシェンコ一門に移籍したことで、トルソワには新しいチャンスが与えられたと思う。新たなコーチらにつくことで、ひょっとして何かを得るということがあるかもしれない。」
しかし一方で、トルソワが成功を収めるとは全く保証されていないとグーシン氏は指摘する。
「トゥトベリーゼはいみじくも語っている。『私から去った者は皆倒れた』と。これも事実だ。今のところトゥトベリーゼのグループが世界1なのだから。(中略)トゥトベリーゼ一門はトルソワの離脱で戦士を1人失ったが、軍を失ったわけではない。」
最後にグーシン氏はこう締めくくった。
「プルシェンコのグループには、トゥトベリーゼ一門のような競争がない。熾烈な競争とその不在、どちらがいいのか。これをトルソワは理解する必要がある。」