世界列強の核武装
SIPRIの専門家らは、2020年初頭には米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国が約1万3400発の核弾頭を保有していたと指摘。これは「核クラブ」の国々が約1万3900発の核弾頭を所有していた2019年初頭よりも減少している。
インドやパキスタン、北朝鮮についての分析は次のようなものだ。「インドやパキスタンも軍備拡大を進めているとみられている。北朝鮮は、国家安全保障戦略の中心的要素として軍事的な核プログラムを優先させ続けている。とはいえ、2019年は、核兵器と長距離弾道ミサイルの発射システムの実験の一時停止を宣言し、それを守り続けていた」。
露米の努力により軍備削減
専門家らは、世界で核兵器の近代化とその保有数の削減が並行して行われている状況は今年が初めてではないと指摘している。2018年には、新戦略兵器削減条約(新START)に基づき、露米が老朽化した核弾頭を解体したことにより、核兵器数は減少。2019年の露米の核兵器数は、同条約で定められた範囲内にとどまった。
SIPRIの核軍縮・軍備管理・核不拡散プログラム部門のヤン・エリアソン部長は、「新STARTの延長をめぐる行き詰まりと、ソ米が1987年に締結した中距離核戦力全廃条約が2019年に破綻したことは、ロシアと米国の二国間核軍備管理協定の時代が終わりを迎えようとしていることを示唆している」と指摘している。
新STARTは、露米の配備核弾頭数の上限を1550個、潜水艦や重爆撃機に配備する大陸間弾道ミサイルなど700基まで削減するように定めている。また、両国による相互査察やデータの交換を行うことも条件に含まれている。
エリアソン部長は、露米両政府の間で「透明性を確保し、互いの核戦力の配備や能力に関する誤解を防いでいた重要なコミュニケーションチャンネルが失われたことで、新たな核軍拡競争につながる恐れがある」と分析している。