国連安保理は2020年1月前半、人道支援体制を半年間に限って延長することを提案したベルギーとドイツの決議案を採択した。この決議案では国境通行所を当時有効だった4ヵ所から2ヵ所にまで削減することが盛り込まれていた。この結果、現在ではバブ・エス・サリャム、およびバブ・エル・ハヴァの国境通行所が開設されている。
国境通行所の開設期間は2020年7月10日で終了することから、国連安保理はこれまで4回にわたって延長を巡る採決が行ってきたが、いずれも常任理事国の間で意見が分かれたことで否決となった。
今回の決議案はロシアが先に用意した決議案に従って、シリアとトルコの間に設置されている2ヵ所の人道支援用国境通行所を1ヵ所にまで削減し、その開設期間を1年間に限って延長するという内容のもの。
ロシアと中国はシリアに対する一方的な制裁が新型コロナウイルスの感染拡大防止対策に脅威をもたらしているとの文言を決議案に盛り込むよう要請していたものの、ベルギーとドイツの決議案にこうした文言は反映されなかったため、ロシア、中国、ドミニカ共和国は今回の採択で棄権した。
欧州連合がシリアに実施している制裁についてドイツは、制裁対象が的確に限定されており、一般市民への影響はないとして、制裁を批判する文言を盛り込むことに反対した。
露中と米英仏の間ではシリアの人道支援体制を巡り、意見の違いが生まれている。
ロシア側によると、シリア政府はこれまでテロリストらが実効支配していた地域を管理下に置いたことから、独自に支援物資を輸送する体制がすでに整っているという。また、この支援体制は一時的な性格のものとして構築されたものであることもロシア側は指摘している。
これに対し米英仏は民間人の元へ支援物資が行き届かず、犠牲者が拡大するとして国境通行所の削減に反対してきた。
関連ニュース