なぜならこの映像は、100年前に生きた人々がまるで「蘇り」、100年という長い年月が経過しても、この古い映像に映っている人々と、この動画をいま見ている人たちの間に違いはないかのような錯覚を抱かせるからだ。
こちらが、シリャエフさんがカラーで蘇らせた100年前の東京
こちらが、そのオリジナルの白黒映像の東京
シリャエフさんは古い白黒映像を最新の技術で単に蘇らせただけではなく、色や音、画質の質にもこだわった。当時のカメラには音を収録する装置が備わっていないため、実際のオリジナル映像は無音。そのため、映像と音を重ね合わせ、当時の雰囲気を伝えている。またシリャエフさんは特殊なアルゴリズムを用いて雑音や映像の損傷部分を除去した。また被写体の顔も技術で細部に至るまで鮮明に再現している。しかし、シリャエフさんがスプートニクに語ったところによると、映像を復元させたとは考えていないという。
「これは復元ではなく、画質を上げるための補正(ビデオ・エンハンスメント)です。また、AIがデータを記録層に加えていくため、歴史的に正確なものでもありません。例えば、被写体の顔は実際と同じではないかもしれません。色と動きは実際のものに近いですが、これらは正しくは『良く見せている』と言うべきものです。復元というのは、それとは違って、歴史的な映像を忠実に修復することで、これはとても手が掛かる作業なのです。私が行ったのは、数千もの画像情報を習得したAIで画像サイズを4倍に拡大させ、失われた画素(ピクセル)を『描き足し』ました。また、別のAIで中間のフレームを追加し、毎秒60フレームになるようにエフェクトを加えました。全体で約10個程度アルゴリズムを使用し、修正箇所の約80%は自動で行いました。私はある日、YouTubeで『1913-1915: Views of Tokyo(1913〜1915年の東京の風景)』という映像を見つけました。私は映像の中で人々が「蘇る」様子が気に入っています。私は歴史的な映像で稼ごうとは思っていませんので、広告を載せていません。私は、歴史は誰もが触れられるようにしておくべきだと考えていますし、この方法だと現代の人々が歴史を認識しやすいと思います。」
シリャエフさんが映像の黎明期に撮影された作品を『より良くさせた』のは、これが初めてではない。1896年にモスクワのトヴェルスカヤ通りや、1906年に米サンフランシスコの風景を撮影したリュミエール兄弟の映画『ラ・シオタ駅への列車の到着』や、1888年10月14日公開の世界最古の映画『ラウンドヘイの庭の場面』も蘇らせている。映像はAIを使って補正したという。しかし、古い映像を復元しネットに投稿することがシリャエフさんの主な仕事ではない。
シリャエフさんがAIを使ったのは映像だけではない。世界的に有名な絵画7作品に描かれた顔を3Dで作成している。これにより、「モナリザ」、「真珠の耳飾りの少女」や「白貂を抱く貴婦人」などの現代版ともいうべき作品が誕生した。シリャエフさんが手掛けた作品は、同氏のYouTubeチャンネルで見ることができる。