現在、米中間の新たな高官級通商協議の予定はないが、両国は通商合意の第一段階の実現に向けたやり取りを継続している。アメリカのマーク・メドウズ大統領主席補佐官が、8月18日、大統領専用機上で行った記者会見の中で述べた。
これに先駆け、同じ日、トランプ大統領は記者団に対し、第一段階通商合意の履行状況を検証する会議を自ら延期したことを明らかにした。この合意は1月に結ばれたもので、会議は先週土曜日に開かれる予定となっていた。トランプ大統領は、新型コロナウイルスをめぐる中国の行動に不満があるとして、いまは中国とは話したくないと述べている。また大統領は、アメリカがこの通商合意を破棄する可能性があるかと問われ、回答を避けた。
「トランプ大統領の声明は、偶然発せられたものではなく、大統領が推し進めている政治路線を証明するものです。新型コロナウイルス感染拡大の責任について、中国を非難していることも、中国に対して圧力をかけるための口実の一つです。その目的は、アメリカ側が提示する条件で第二段階の通商合意を締結させることです」。
トランプ大統領はアリゾナ州ユマでもブリーフィングを行い、民主党大会での候補者指名への注目を逸らそうと試みた。事実上、選挙運動とも言えるこのイベントの数時間後、ジョー・バイデン氏が民主党候補として正式に指名されたことが報じられた。トランプ大統領は、新型コロナウイルスによって打撃を受けたアメリカを復活させると述べ、トランプ政権を特徴づけて表現される「混沌状態」に終止符を打つと言明した。
観測筋は、昨日ジョン・ケリー元国務長官が、4日間にわたり開かれている民主党大会で行なった発言にも注目している。元外交官で経験豊富な政治家であるケリー氏は、トランプ大統領の外交政策について、「一貫性がない」とし、大統領の外国訪問は親善友好ではなく、NGビデオだと批判するとともに、アメリカには笑い者ではない大統領が必要だと述べた。
では、中国にとって、アメリカとの通商協議の相手として望ましいのはトランプ大統領なのか、それとも次期大統領に選ばれた場合のバイデン氏なのか?これについて、中国人民大学国際関係学院の时殷弘教授は、両者の間に大差はないと指摘する。
一方、民主党のバイデン氏が政権に就けば、ホワイトハウスの顔ぶれは変わるが、中国に対する政策が変更されることはないだろうというのが、アンドレイ・マノイロ教授の見解である。
「民主党政権は中国との貿易戦争をけしかけることはないでしょう。しかし、この戦争を始めたのがトランプ大統領であることから、トランプ氏がホワイトハウスを去れば、すべての失策、過ちをトランプ氏の責任にすることができます。もし民主党が政権に就いても、中国に対する制裁措置を撤回することはないでしょう。逆に、圧力を強め、トランプ政権の成果を利用する可能性もあります。そのための下準備はすでにトランプ大統領が行なっているのですから。つまり、いかなる違いもないということになります」。
マノイロ教授は、ジョー・バイデン氏はおそらく、トランプ大統領と同じやり方で、対中国貿易赤字の減少を目指した路線を継続するだろうとの考えを示す。
一方で、中国との政治的な冷え込みが長引く中、アメリカ経済は中国市場での新たな可能性を探っている。「サウスチャイナモーニングポスト」紙は、在中国アメリカ商工会議所からの情報として、会議所が、コロナウイルスの感染拡大に伴って中国から帰国していた、在中国企業の上層部らを中国に戻すためのチャーター便の運航許可を受けたと伝えた。当初、中国への帰国を希望するのは管理職に就く120人ほどの予定だったが、現在は200人ほどになっているという。商工会議所は、今回のチャーター便を利用することができるのは、コロナウイルス感染拡大の前に、会員企業に勤務していた者だけだとしている。中国へのチャーター便運航の日程は8月28日から9月12日に予定されている。
なお、5月に在中国ドイツ商工会議所が、同様のチャーター便を天津市向けに運航している。
関連ニュース