脳の一部である側頭葉の内嗅皮質に存在するいわゆるグリッド細胞(格子細胞)は、空間の位置感覚を認識する機能を担っている。側頭葉は、アルツハイマー型認知症で最初に影響を受けることになる部位の一つ。
プレスリリースには、「もしあなたが夜中に起き出し、暗闇の中でトイレに向かおうとする時、視覚や触覚などを介した外部信号を使わずに部屋の中で自分自身の位置を追跡するメカニズムが必要になります」というこの論文の筆頭著者であるアンネ・ビアブラウワー氏の言葉が引用されている。
アルツハイマー病の遺伝的素因を持つ人々は、この格子細胞の機能が変化していることが多いことが研究で明らかになっているが、空間の位置感覚を認識する能力については今まで評価されていなかった。
そこで研究者らは今回、この能力を評価するため空間の方向や位置感覚を確認するコンピューターを用いた課題を用意した。この課題に取り組む被験者は、外部からの誘導装置が完全に存在しない状況で自分でルートを探し出さなければならなかった。
この実験の結果、アルツハイマー病の遺伝的素因を持つ被験者は、空間の位置感覚を認識する能力が低いことが明らかになった。
研究者らは論文で、外部信号を使用せずに行う空間把握は、格子細胞の活動機能に完全に依存するとの推測を示している。さらに研究者らはこの研究で、遺伝的にアルツハイマー病の素因を持つ健康な人の格子細胞の活動量が不足していることを明らかにしている。
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