ストレスを原因とする精神疾患を治療するにあたっては、生物の体がどのようにしてストレスと闘い、どのような神経系の仕組みがストレス耐性を強化するのかを理解することが必要である。こうした問いに答えを出すために、米国の研究グループがネズミを使った実験を行った。
実験は3週間にわたって行われた。実験は、ネズミを2つのグループに分け、片方のグループのネズミには輪の中を走らせ、別のグループのネズミはカゴの中に置いておき、両方のネズミに定期的にストレスをかけるというもの。そしてストレスをかけた直後と、その24時間後に、ネズミの状態をチェックするのである。また研究者らは、ストレスに対する反応に関与するいわゆる青斑核と呼ばれる神経核にも注目した。
実験の結果、輪の中を自由に走っていたネズミの脳からは運動中に神経ペプチド・ガラニン(脳内に作られるタンパク質分子の一つ)が大量に作り出され、それが青斑核に集まることが分かった。そしてその結果、このグループのネズミはストレスを簡単に耐えることができ、実験の3週間目にはストレスにほぼ反応しなくなった。
一方、運動の機会を与えられなかったネズミは、危機的状況に陥ると、青斑核での神経ペプチド・ガラニンの生成量が急激に低下した。これにより、ストレス耐性が弱くなり、動物はネガティヴな場面により強く反応するようになった。
実験を行なった研究者たちは、近いうちに人間にも同じような働きがあることが確認できるだろうとの確信を示している。
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