原子炉の状態の監視メソッドに挙げられるのがニュートリノの分析。これは核燃料が盗用され、違法な核兵器の製造に使われかねない事態を防止できる。状態がおかしいと疑われる原発が見つかった場合、その運転に関与せず、遠距離での分析が可能だ。
ロシア国立原子力研究大学の専門家らの説明によれば、原子炉の運転で核燃料が崩壊する際に生み出される生成物のひとつとして、 プルトニウム239の同位体ができる。これはいわゆる核兵器製造の原料となるプルトニウムだ。ニュートリノの放射検出器を用いればこの物質が取り出された場合、それを明らかにすることができるか、もしくは核反応で起きた同位体構成物の変化を見つけることができる。
ロシア国立原子力研究大学はニュートリノを用いた遠隔管理メソッドの改良を行いながら、従来のものと原則的に異なる、重い原子核へのコヒーレント弾性散乱効果に依拠した二層検出器の製造に取り組んでいる。この現象についてはソ連の物理学者らが40年以上も前に予言していたが、2017年に実施された加速化の実験でようやく実証された。
ロシア国立原子力研究大学の話では、コヒーレント弾性散乱効果を用いることで従来の機器より1000倍も感度の良い検出器を製造することが可能。現在使われているニュートリノ検出器は重量が何トンもあり、原子炉の大きさに呼応したサイズだが、新しい検出器は小型のモバイル機器ほどの大きさで実現することができる。
現在、研究者らは史上2度めとなるコヒーレント弾性散乱の観察で得られたデータの分析を終えており、これによって現象の理論モデルの精度を著しく上げることができたと語っている。2度目の観察ではニュートリノをあてる標的としてアルゴンのより軽い原子核が用いられた。
ロシア国立原子力研究大学の話では、すでに国際原子力機関(IAEA)の指導部が原子力エネルギーをより安全で透明性の高いものにできるとして同大学設計の検出器に関心を示した。
研究者らはこのほかにも、検出器の高感度は科学的な目的の使用にも十分耐えると太鼓判を押している。例えば太陽や超新星のニュートリノ放射の分析に用いれば、その内部でどういったプロセスが起きているかをよりよく理解することができる。
来年2021年にも科学者らは、モスクワから北のトヴェリ州にあるカリーニンスカヤ原発で検出器の初実験を行う計画だ。次世代型超高感度検出器RED-100を用いたコヒーレント弾性散乱のプロセス研究はロシア科学基金の助成金(RNF №18-12-00135)を受けている。原発の原子炉のアクティブゾーンの有効な遠隔管理技術の開発を目的としたRED-100の実験は、ロスアトムの子会社「科学とイノベーション」(株)が後援している。