何が起こったのか?
開発の最終段階にあったアストラゼネカ社のワクチンで、イギリスで行われた試験の参加者に「原因不明の疾患」が見つかったとして、9月6日からアメリカで臨床試験が中断されている。欧米メディアによると、極めて稀な神経障害の一種「横断性脊髄炎」が見つかったとみられる。しかし、アストラゼネカ社はこの情報についてコメントしてない。
臨床試験中の有害事象はよくあること?それとも危険なサイン?
この疑問に答えてくれたのは神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の白川利朗教授。白川教授は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口ワクチンの開発」の研究開発代表者である。
ワクチン忌避が拡がる恐れ
ワクチン忌避は世界保健機関によって2019年の「世界的な健康に対する脅威」トップ10に選ばれた。アストラゼネカ社のワクチンに副作用の可能性があるというニュースが出たことで、ワクチンに対する偏見が拡がる恐れがあると考えられる。こうなると新型コロナウイルスのワクチン接種を人々に呼びかけるのは決して簡単なことではなくなる。白川教授はこれを踏まえ、人々にワクチンの影響を誠実かつオープンに説明していくことが非常に重要だと語る。
白川氏:ワクチンは通常、健康な方に予防的に投与しますので、副作用が出た場合のインパクトが大きいことは理解できます。個々のワクチンのメリット(有効性)、デメリット(副作用の可能性)をエビデンス(データ)に基づき丁寧に説明していくことが重要と考えます。
ワクチン接種可能なのは誰?不可能なのは?
白川氏:「ほとんどのワクチンの安全性は高く、高齢者や持病を有する人にも接種可能です。また投与前の検査も特に必要ではなく、日本では接種を行う医師が問診票等で健康状態を確認して接種の可否を判断します。ワクチンの安全性ハードルとしては、ワクチンの種類によって異なり、例えば感染性のある弱毒生ワクチン等の接種には、より慎重な判断が必要です。COVID-19ワクチンについても、COVID-19に対するワクチンだからハードルが特に上がるわけではなく、ワクチンの種類によって安全性が変わってくる可能性があります。」