クラスノフ検事総長はまずクナシル島から訪問を開始。ここで地区の検察庁の建物にロシア検察庁名誉職員アナトリー・トゥルヒン氏を称える記念プレートが設置する除幕式に列席した。トゥルヒン氏はソ連時代にユジノクリリスキー地区の検察官を務めていた人物だ。
それからクラスノフ検事総長は、ロシアの全ての治安維持機関の規制に則り、住民との話し合いを行った。こうした場では普通、地域住民は地元当局に対するクレームを申し立る。検察側はこれを受けて調査を開始し、必要とあらば犯人を罰する。
検事総長が南クリル諸島の島民と交わしたテーマは住居問題、物価、中小企業の事業実態と、ロシアの他の地域でも繰り返されているテーマと変わりない。老朽化した住居、また住民に危害を及ぼしかねない住居に暮らす市民は自治体を通じた新しいアパート給付問題、国営や市営住宅の賃貸問題を訴え、事業主は補助金問題や給付を受ける際に自治体と結ぶ社会契約の遂行が難しいことを打ち明けた。住民との話し合いを総括し、検事総長は地元の検察官らに対して食料品、生活必需品の価格の妥当性、それらの島への配達原価を調べるよう申し渡した。
一方で日本外務省は当然のごとく、この検事総長の訪問は領土問題(日本の表現での「北方領土」)における日本の立場と相いれないと抗議を申し入れた。
ロシア検事総長の南クリル訪問は島にはためく「ロシアの国旗をアピール」するというよりは、むしろロシアとしては安倍晋三氏の辞任を理由に政治対話を箱の奥底にしまい込むつもりはなく、安倍氏路線の後継者と意見交換を開始する構えであることを想起させる。いずれにせよ、日本政府内の役職交代で公式的な声明が続いた後、実際のところ菅首相は対露関係をどうしたいと考えているのか、その真相を図りたいという意図ははっきり表れている。