何よりまず日本国債を正当に評価する必要がある。世界市場において、日本の国債は常に需要があった。利回りがゼロに近いという現象は、最近に限ったものではないにもかかわらず、である。日本経済は1990年始めから不況となっているが、これを深刻化させたことは一度もない。つまり、日本の国債は投資家たちにとって、「貯蓄」なのである。実際、利回りはほとんどないが、この債権が安全であることは確信できるのである。
日本は新型コロナウイルス感染抑止政策において、効果的に感染者を追跡することによって、一定の成功を収めた。加えて、日本政府は経済活動維持のための積極的な策を講じている。国際通貨基金(IMF)の統計によれば、景気刺激策の資金だけでも国内総生産(GDP)の最大40%にのぼり、これは非常に大規模なものである。米国がGDPの15%、中国はわずか4.5%と比較すれば、この数字の大きさが分かるだろう。
また日本政府は企業への助成金、国民への物的支援、納税に関する特別措置なども検討している。こうした措置はいずれも、不況の中、コロナ危機に直面した日本の経済を短期的に支えるものである。日本銀行の黒田東彦総裁は演説の中で、日本経済はパンデミックの悪影響から持ち直しつつあるとの見解を示している。8月の日本の経常収支は2兆1,020億円の黒字となった。黒田総裁はまた景気回復のテンポが十分でない場合には、追加の支援策を高じると明言している。
大和総研グループのリサーチ部門は、2020年の日本の実質GDP成長率は4.5%低下するが、2021年には2.5%の増加に転じるとの予測を示しており、このことは投資からに日本市場への信頼感を与えている。しかし世界的に見れば、米国でも深刻な落ち込みが予測されており、そこで中国は投資先を分散するため、日本国債の購入を増やしているのだと中国の黒竜江省社会科学院北東アジア研究所の笪志剛所長は述べている。
「中国と日本の協力は貿易や投資だけでなく、金融分野でも行われています。こうした協力は危機発生のリスクに共に対抗し、金融協力のレベルを向上させることができるという意味で、双方にとって有益なものです。中米関係の悪化に伴い、米国は中国企業への投資に厳しい制限を発動しています。そしてこれは統合や吸収合併に対し圧力をかけるものです。グローバル化の戦略は投資先を分散することです。そこで中国政府と中国企業は日本国債に目をつけたわけです。しかもコロナウイルス感染拡大の状況下においてはその他のリスクも発生します。我々は持っているすべての卵を1つのカゴに入れたくはないのです。これは理性的な投資分散の原則にしたがったものであり、投資の安全性を高めるものです。日本の国債の利回りがゼロに近くなったとしても、日本の経済発展はかなり安定しています。ですから日本の国債は中国の投資先を分散させる手段の一つなのです」。
とはいえ、中国が日本の国債の購入を増大させている第一の目的は、米国債からの依存を低減することである。中国は長期にわたり、米国債の保有額でトップの座を占めてきた。しかし中米関係が悪化を続ける中、中国政府はこうした投資の安全性について考えざるを得ない状況に置かれているのである。