そもそも高度人材とは、専門的な知識や技能を備え、日本の産業にイノベーションをもたらして日本の労働市場の効率性を高めたり、海外とのビジネス拡大に貢献する、外国籍の人材のことだ。こうした人材の獲得競争は国境を越えて、日増しに激しくなっている。ロシアは、理数系教育の基盤が強固で、高度なIT技術者を山のように輩出している。特にエンジニアが不足している日本にとって、ロシア人高度人材の受け入れ拡大は、国としての政策ニーズとも合致する。
現在、日本に滞在する高度人材は約27万人いるが、そのうちロシア国籍を持つのはわずか1200人程度と、全体の0.4%にすぎない。日本で就労するロシア人の拡大に応じ、高度人材の数も増加してはいるが、まだロシアの存在感は大きくはない。
スプートニクは、この企画の中心となったジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課、リサーチ・マネージャーの齋藤寛氏に話を聞いた。
ジェトロの調査チームは、ロシアの高度人材を受け入れている複数の企業を訪問し、インタビューを行った。齋藤氏は企業訪問を次のように振り返っている。
齋藤氏「 皆さん非常に能力が高く、考え方もしっかりとしていて驚くとともに、日本人としてうかうかしていられないと思いました。ロシア人を雇用している企業からはいずれも、真面目で勤勉、向学心が強く、親日的で日本人と親和性が高いという評価が聞かれました。特に新しくロシア人を雇用した企業からは、それまでのロシア人のイメージと180度変わったという声がありました。」
調査の過程で、課題も多く見つかった。ロシア人にとって不慣れな日本の企業文化、明文化されていない日本の慣習、日本での生活をめぐるありとあらゆる問題などだ。しかしそれ以前に、そもそも、日本が魅力的な就労先として認識されていないというのである。
アフターコロナ社会ではデジタル化が一気に進むことが見込まれ、より多くのロシア人エンジニアの活躍の場が世界中に広がるだろう。齋藤氏は「ビジネスに大きく貢献するだけでなく、一人ひとりの実績が日露交流の拡大にも貢献する。日本企業の方々には東南アジアやインドの高度人材だけでなく、ロシア人高度人材にもぜひ目を向けてほしい」と話している。
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