2020年の1月、中国の株式市況は良好といえるものではなかった。中国と米国の貿易戦争は、世界の企業界や投資家にも緊張感をもたらした。また新型コロナウイルスの感染拡大も先を見通せない大きな要因となった。中国は世界に先立ち、きわめて厳格な隔離体制を導入し、これにより複数の地域で経済活動が停止、また国内総生産(GDP)も低下した。もっとも、このような厳しい措置により、中国は世界の中でももっとも早く感染拡大に歯止めをかけることに成功した。そして、第2四半期には経済活動は回復の兆しを見せ、輸出、主要銘柄への投資、国内需要、購買担当者景気指数(PMI)など、あらゆる経済指標も月ごとに改善した。
加えて、中国の成長を妨げる外からの否定的な要素も依然、残されている。第一に挙げられるのが、多くの先進国における新型コロナウイルスに関わる状況である。とりわけ、中国の主要な貿易相手国である米国やEU諸国では、依然、厳しい状況が続いている。こうした状況は、各国の経済発展にも影響を与えることになり、当然、今後の中国との貿易経済協力にも影を落とすことになる。第二に、中国のテクノロジー企業に対する米国の圧力が強まっていることである。先週、トランプ米大統領は、中国人民解放軍と関係が深いとされる中国企業への投資禁止令を発令した。米国が禁止対象とした企業のリストには、大手のテクノロジー企業、通信機器メーカーなどが含まれている。またニューヨーク証券取引所は、すでに中国移動(チャイナ・モバイル)、中国通信(チャイナ・テレコム)、中国聯通(チャイナ・ユニコム)の上場を廃止している。ロイター通信が米政府に近い消息筋からの情報として伝えるところによれば、トランプ大統領は中国IT大手の阿里巴巴(アリババ)や騰訊(テンセント)も中国軍関連企業に追加することを検討しているという。この2社は資産世界の発展途上国の企業の中で2位と3位の資産を有しており、時価総額は合わせて1兆3,000億ドル(およそ130兆円)にのぼる。このアリババとテンセントの株式を保有しているのは米国の大手投資家である。
中国株式市場の成長に関連し、ブルームバーグは中国国家主席の楽観的な声明に注目している。中国共産党中央党校で行われた主要指導幹部会議の冒頭、習近平国家主席は、現在、世界は100年来未曾有の大変化に直面しているが、こうした時代や情勢は中国の味方であると強調し、機会も挑戦もどちらも今までになく大きいが、総体的に見れば、機会の方が挑戦よりも大きいと述べた。中国人民大学重陽金融研究院の研究員、ビャン・ユンツー氏は、スプートニクからのインタビューに応じ、中国では最近、複数の部門で他の国よりも大きな成長が見られ、こうした経済における肯定的な傾向が世界の投資を呼び込んでいると指摘する。
経済刺激策として低金利政策を講じている一連の西側諸国と異なり、中国は財政政策での部分的な刺激策を行うに留め、均衡のとれた金融政策を維持している。これにより、何よりインフレの抑止に成功している。これは、国内需要を刺激しようとする際に非常に重要なことである。次に、経済規制当局に、状況が急転したときに規制当局に、より大きな自由度が残されていることである。このような政策は功を奏するものである。テスラ社がS&P500種株価指数の構成銘柄に選ばれたのも、巨大な中国市場によるものである。世界的な購買力の低下により、自動車の販売数が減少している中、テスラは中国市場で5四半期にわたって利益を上げており、テスラの2020年の販売の約半分が中国向けとなっている。高級商品の製造企業も、中国のおかげで2020年を生き延びることができたと言える。贅沢品の世界的な市場は2020年、23%縮小したが、中国では48%拡大、529億ドル(およそ5兆2,900億円)規模となり、世界全体の売り上げの5分の1を占めた。
習近平国家主席は党学校で演説した中で、共産党高官らが新発展理念を維持することの重要性を改めて強調した。新発展モデルとは、国内の市場と需要の大循環を主体としながら、国際的な循環との相互促進を働きかけ、国内の技術革新とテクノロジーの独立を目指す「双循環」戦略である。これは、国外の情勢に左右されることなく、中国が技術製品の取引を発展させることを意味している。2020年に採択された基本計画で、中国は2025年までのデジタル技術と「新インフラ」の発展に10兆元(およそ1兆5,000億ドル)を投資を予定している。おそらく、これについても、国外投資家の中国テクノロジーに対して変わらぬ関心があることで説明がつくだろう。現在、中国企業の株式はMSCI指数でも主要な存在となっており、構成銘柄の最大40%を占めている。