現在のオーサーの外国人選手のほとんどはまだ母国に残っている。五輪2冠の羽生結弦選手は日本に、チャ・ジュンファン選手は韓国で、ポーランドのチャンピオン、エカテリーナ・クラコワ選手も祖国にいる。
ロシアのメドベージェワはパンデミックの間、カナダから日本、日本からロシアへと移動した挙句、オンラインでトレーニングをし続けることに困難を感じ、昨年9月、とうとう古巣のエテリ・トゥトベリーゼ氏の元に戻った。メドベージェワの決断については当時オーサー氏は、コメントでリモート体制での練習の困難さを明かしていたが、この間にオーサー氏の理解はどう変化したのだろうか。中国スケート連盟と契約して指導を行っているオーサー氏はこれについてインターナショナル・フィギュアスケーティングからの取材に、次のように語っている。
ライブとバーチャル パンデミックで学んだ新指導法
パンデミックはコーチの仕事の方法も大きく変えた。ZoomやFaceTimeなどのテクノロジーが利用可能になったことで、バーチャルコーチングで世界各地に指導を拡大することが可能となった。オーサー氏は外国人選手がトロントのスケーターのグループクラスに参加できるようにして、トレーニング仲間とのつながりを作っている。
「彼ら(外国にいる選手)とはZoomクラスをたくさんやっていますし、ビデオを送ってくれれば、私が評価してコメントを返します。それが一番いいですね。」
こうして方々にいる選手らが同じエクササイズを行い、それを互いにみることができるため、オーサー氏は「ホームとチームの感覚を持つことができる」と評価している。
指導をライブとバーチャルの両方で行い、それぞれのメリットを生かす。これはパンデミックを通して、オーサー氏らコーチ陣が学んだ方法だ。
「実際にこの方法で仕事をすることで多くのことを学んだし、悪いことではありません。(…)私が世界のどこかでセミナーし、その1ヶ月後にグループでZoomクラスをやって、いくつかのことをリマインドさせることが可能です。思い出させることができます。それが将来の道かもしれません。」
バーチャル技術に弱い世代でも
「まず第一に、私は技術を理解し、対応できるようになりました 。これは私や同年代の多くには大きな困難な注文でした。もっと考え、物事を別の方法で処理し、適切な言葉を見つけなければならない。でも、それがスケーターとのより良い関係を築くことにつながるのかもしれません。お互いに地球の裏側にいるにもかかわらず、何かがあるような気がします。」
選手らはより良いコンディションでリンクに戻った
オーサー氏のコーチ陣はロックダウン中は他の専門家に協力を仰ぎ、選手らが安全にコンディション作りを行えるようオフアイスジャンプやバレエのクラスなどを指導してきたという。そして、封鎖が解除された5月末、リンクに戻ってきた選手らはコーチ陣を驚かせた。ほとんどの選手らがそれまでより良いコンディションになっていたからだ。
「私たちは栄養や心理学のことを気にしていました。トリプルアクセルに集中するがゆえにアスリートが見落としがちなことがたくさんありました。彼らは皆、4回転ジャンプやトリプルアクセル、ダブルアクセルが出来なくなるのではないかとパニックになっていましたが、数日後にはジャンプをしていた時よりも強くなっていました。見ていてとてもクールでした。」
多様なコーチングで成績アップ でもユヅがいなくて寂しい
「私たちのプログラムで育成され、普段は会えないような子らに会えるのはとても楽しい。でも、大物がいないのは寂しい。ユヅ、ジュン、カティアがいなくてすごく寂しい。今は残念だけど、みんなが戻ってきたら最高の日になる。」
トップクラスの選手が祖国にとどまっていることは、オーサー氏にとっては寂しい反面、よいこともあった。新入生で、普段は一緒に仕事をすることのないカナダの生徒たちと一緒に仕事をする時間が増えたからだ。
大会中止で失望 モチベーション維持の難しさ
オーサー氏は10 月下旬に予定されていたグランプリシリーズ・スケートカナダが中止となった時に味わった失望感を回想し、あれは「ハードだった」と語っている。
「私たちはエキサイトしながら、5人の優れたスケーターをスケートカナダに向けて準備していました。選手らはこれがリアルタイムでの唯一の大会だと考えていたので、一生懸命トレーニングしていました。抜群のコンディションにあったので、選手らはとてもがっかりしましたよ。正直言って、その後のモチベーションを上げるのは難しかったですね。」
国内大会の場があるロシア ちょっと悔しい
「我々にとっても、コーチである私にとっても悔しい。毎週末、ロシアでの大会を見ています。それが国内予選であろうと、ロステレコムカップであろうと、テストスケートであろうと。彼らは競技をしているのに、我々はしていないというのは、ちょっと悔しいです。オリンピックが近づいているので、彼らにとっては良いことです。」
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