カバ問題
エスコバルの贅沢な私設動物園にいたカバたちは、エスコバルの死後、コロンビアの動物園に移され、マグダレナ川の岸には移動させる手段のない巨大なカバだけが残された。カバは自由の身となり、コロンビアにとって珍しい動物であるカバには自然界の敵もいないことから異常繁殖し、コロンビアの生態系に脅威を与える存在となった。
研究者らはこの調査結果を雑誌「バイオロジカル・カンバセーション」誌に掲載した。
殺処分するのか去勢するのか?
研究者らは環境を元の状態に戻すことはまだ可能であるが、そのためには年間30頭を駆除または去勢する必要があるとしている。「コカイン・カバ」はコロンビア在来の動物の個体数を減らし、川の化学成分を変え、それにより数千人のコロンビア人が生業としている漁業に害を及ぼす可能性がある。
一方で、カバの駆除に反対する人々もいる。いくつかの国際団体は、このカバを絶滅種とみなしているからである。そこで「コカイン・カバ」の保護を訴える人々は、去勢するという方法を提案している。しかし、カバの去勢は容易なものではない上、高価でもある。カバは重量5トン以上もあり、しかも非常に凶暴だからである。2009年に一度、「コカイン・カバ」の去勢手術が行われたが、その費用は5万ドル(およそ523万円)に達した。そして予め麻酔で眠らせていたカバを大型クレーンでなんとか仰向けにするのも一苦労であった。
エスコバルの遺産
「コカイン・カバ」の問題をめぐって、コロンビアは2陣営に分かれた。一方は、繁殖力の強いカバを処分し、生態系を元に戻そうとする人々、もう片方はカバを何としても保護しようという人々である。2020年に、カバが地元の農民を襲い、重傷を負うという事件が起きた後も、カバの保護を求める人々の数は減っていない。コロンビア政府は困難な問題に直面している。しかし、できるだけ早くこの問題を解決しなければ、「コカイン・カバ」の被害はコロンビア最大の川の生態系だけでなく、すべての川や貯水池にも及ぶことになるのである。
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