アンバーグリスはマッコウクジラの腸内で分泌される蝋状の物質。そのためこの物質は「マッコウクジラの嘔吐物」とか「海に浮かぶ金塊」などともよく呼ばれている。通常は香水を製造する際に固定剤として使用され、年代物であれば非常に高価になることもある。国際市場でのアンバーグリスの価格は、1グラムあたり最大で45ドル(約4700円)。運が良ければ時々ビーチで見つかることもある。
ニュージーランド在住のダンカン・ペインさん(61)は、2018年からアンバーグリスを探している。そのためペインさんは月に4~5回はビーチへ行き、見つけた石を持ち帰り、数ヶ月間乾燥させてから汚れを除去している。ペインさんは、自宅にアンバーグリスがあるという知人を訪ねた際も、匂いでアンバーグリスかどうかを見分けることさえできると主張している。
ペインさんは、新しい香りを作るというオーストラリアの調香師に最近見つけたアンバーグリス5グラムを送った。しかし、香りを作る作業には長い時間がかかり、完成には2〜3年かかるという。またペインさんはシンガポールのバイヤーにもアンバーグリスを2キロ送った。そのバイヤーは往復の航空券を含めて2万ドル(約210万円)をペインさんに払うことに同意したものの、受け取った物体を見て本当にアンバーグリスなのかどうか疑っている。
そしてこのシンガポールでの一件で、香水業界の代表者はペインさんとの取引を控えることにした。オタゴの自然科学博物館の専門家がペインさんのコレクションを調べたところ、ペインさんが見つけたのはアンバーグリスではなく、軽石や砂岩であると確認した。しかしペインさんはこの結果に気落ちすることなく、コレクションをフェイスブックで売ろうとしている。
これについてペインさんは、「ビーチで何かを拾って売る権利は誰にもあるはずです。私だけではありません。みんなにあるんです」と話している。