3人のソフィア
エテリ・トゥトベリーゼ、エフゲニー・プルシェンコ両氏のチームの女子ジュニアらに強敵が出現した。CSKAモスクワ(ツェーエスカー:地上軍中央スポーツクラブ)所属で将来有望な若手コーチのセルゲイ・ダヴィドフ氏の手ごわい教え子らだ。
来るロシア杯ファイナルでは、エテリ・トゥトベリーゼ、エフゲニー・プルシェンコ、セルゲイ・ダヴィドフの3氏の率いるモスクワの3チームの熾烈な戦いが展開すると期待されている。3者のチームは2月初めのロシアジュニア選手権でも火花を散らして戦った。これには18人の女子が出場している。1位を占めたのはトゥトベリーゼ・チームの新星ソフィア・アカチエワ(13) 。アカチエワはフリープログラムで4回転ジャンプを2度決めたが、トリプルアクセルでは転倒した。アカチェワのライバルでダヴィドフ氏の教え子のソフィア・サモデルキナ(14)はプログラムで2つの4回転サルコウを跳ぼうと頑張った。とはいえ実際はソロで跳んだサルコウは4回転まで回り切れなかったが、それでも4回転サルコウからダブルトゥループへの連続技は見事に決まった。3人目のジュニアのソフィアはプルシェンコ・チームにいる、ソフィア・ムラビヨワ(14)。ムラビヨワは4回転はまだ習得中だが、4回転が跳べなくともサモデルキナを追い越し、しっかり表彰台に場所を確保した。ムラビヨワはリストの曲に乗って正真正銘の芝居を演じ、すべてのジャンプを一点のミスなく決めて観る者を魔法にかけた。
軽い、速い、怖いもの知らず…
ダヴィドフ氏はスプートニクからの取材に答えた際に、特定の教え子に重点を置いた言い方はしなかった。ダヴィドフ氏の元にいる成長株は一人や二人ではないからだ。
「みんなそれぞれ問題は抱えていますよ。体に支障がある、メンタル、フィギュアで今、絶対出来なきゃいけないとされる難解な技がこなせないなど。技が出来る者が勝つ。ジャンプに関してはフィギュアの女子は男子を追い越して、はるかに先に行ってしまっていますからね。女子の発達の仕方は男子とは違うんです。男子の場合、このプロセスはずっと長く続くのですが、女子は 今のルールのもとではこれはほんの一時。彼女たちが軽量でスピードが出せ、怖いもの知らずの時期だけなんです。ですからこの短い時期に全部を覚えこまねばならない。そうでないとその先もっと難しくなるからです。ただし勝利のためにこれぞ唯一の決定打、といえる要素は存在しません。全部が大事なんです。身体的なアビリティも、粘り強い訓練も野心も、絶対に勝つという強い気持ちにプラスして正しい準備も。」
5回転 達成の日も遠くない
ロシアのマスコミは「ダヴィドフ氏はジュニアの育成においてエテリ・トゥトベリーゼ氏に挑戦状をたたきつけた」と盛んに書き立てている。これについてダヴィドフ氏自身はそんなつもりはないとして、次のように答えている。
「これは挑戦状なんかじゃない。ただ私も彼女もフィギュアスケートの発展に遅れをとるまいと必死で頑張っているだけです。スポーツの方ですよ、条件を付けてきたのは。勝つためには4回転ジャンプが要るという。それでこちらも4回転を練習し始めた。勝ちたいならトリプルアクセルを跳べないといけない。そこで私たちもトリプルアクセルを練習し始めた。うまくいく子もいれば、できない子もいます。でもみんな頑張っていますよ。将来、ジャンプに強くなって5回転まで到達する子が出る日はそう遠くない気がします。だってですよ、前は4回転だって跳べるとは思えなかったんですから。」
現在、4回転は世界最強の女子フィギュア選手なら全員プログラムに入れている。安藤美姫さんが2002年に当時14歳で女子シングル史上初の4回転サルコウを達成したことは皆の記憶に刻まれている。その15年後の2017年、今度はロシアのアレクサンドラ・トルソワ(当時13歳)が4回転サルコウの挑戦を宣言したが、結果的にはミスなく跳べたのは2018年のロシア杯ファイナルのただ1度だけとなっている。