原子力発電所事故収束対応調整官の羽田氏は、福島第一原発は継続的な炉心への注水によって、安定状況を維持していると説明した上で、「2018年11月の第4回IAEA レビューミッションでは緊急事態から安定状態への移行が見られるとの評価をいただいた」と付け加えている。また羽田氏は、2019年12月に改訂された中長期ロードマップに基づき、福島第一原発に関して、どのような問題が主要なものになっているのかについて述べた。
羽田氏:「この10年の間、2031年内に1〜6号機すべての号機から使用済み燃料を取り出すという目標を掲げました。また徐々に汚染水の発生量を減らしていき、徐々にデブリ回収のスケールを拡大していきます。こうした中で、作業の最適化を図り、10年ののち以降は、主にデブリによるリスク制限に集中していく予定です」。
続いて、小野氏は、2月13日に発生した地震が廃炉作業に影響を与えたかどうかについても言及している。
小野氏:「地震によって、事故を起こしてはいない5〜6号機、あとは共用プールの使用済み燃料プールで、スロッシング現象により水がトータルで約3000ccほどこぼれたりしています。しかしこぼれた水の量が少なかったこともあり、特にプールの冷却等にはまったく影響がなかったという状況です。それから5〜6号機の滞留水等を貯留していたフランジタンクから漏洩が確認されたり、瓦礫を入れたコンテナの一部が転倒したり、さらには多核種除去設備(ALPS)で処理を水等を入れたタンク等に位置ずれなどがありましたが、いずれも特に外部への影響はまったくないことを確認しています。その後、原子力炉格納容器の1号機、3号機で水位は低下傾向にあることを確認しています。水位低下の原因ですが、地震によって格納容器の損傷部の状況が変化をしたと言うことが考えられています。我々は以前から、原子炉の注水を停止して、水位の低下がどうなるかということを確認する試験を行なっておりますが、今回の水位低下も試験の範囲内に収まっております。我々は十分な経験値を持っておりますので安心していただきたいと思います」。
さらに、小野氏は、詳しい説明を行った中で、「地元の皆様の安全安心」が福島復興の前提において最重要なものであると指摘している。そこで、地元住民とのコミュニケーションの確立と信頼関係の形成を目的として、あらゆる形式の対話の可能性を探っていると述べた。
「スプートニク」は、相互方向のコミュニケーションの重要性について、信頼問題が起こっている原因は何なのか、また国民の理解を得るためにやっておくべきことがあったのかどうか質問した。
また、これに付け加える形で、小野氏は次のように述べた。
小野氏:「我々はこれまでも情報は相当量出してきましたが、ただそれはどちらかというと、我々が情報を“伝える”ということに重きを置いてきたところがございます。しかし、やはり大事なのは“伝える”ではなくて、“伝わる”だと思っています。ですから、相手の方がどういう風なところに関心があるのかということをきちんと押さえて、それに対してきちんと応えていくという“伝わる”コミュニケーションというものを心がけないといけないと思っていますし、その点を今後しっかりと取り組んでいきたいと思っています」。