東京オリンピック組織委員会は3月20日、国際オリンピック委員会の合意を得て、外国からの観客の受け入れを断念するとの決定を下した。外国からの入国者が、感染の可能性がより高い新たな変異種を日本に持ち込む可能性があるためだというのがその根拠となっている。
大会組織委員会と国際オリンピック委員会の代表らは、外国人観客の受け入れについて、最近まで、そのような可能性も除外できないとしつつ、明言を避けてきた。しかし、3月初旬に橋本聖子委員長は、大会開催については安全、安心が第一だとの見解を明らかにしていた。
今回の決定により、最大の痛手を負うのはホテル、レストラン業界、そして観光分野全般である。大会組織委員会の発表によれば、海外向けに販売された観戦チケットの枚数は、オリンピック大会がおよそ60万枚、パラリンピック大会が3万枚となっている。大会組織委員会はこれらのチケットを払い戻すと約束している。
損失額はこれ以上の規模となる可能性もある。各競技場の観客数もまだ決まっておらず、国内の観客がどれくらい入るのかは現時点では不明である。またチケットを自ら払い戻す人、またなんらかの制限、理由により払い戻しを余儀なくされる人が出てくる可能性もある。というのも、これまでの世論調査では、大多数の回答者が、大会について、延期または中止すべきだと答えているからである。
サッカー評論家のワレリー・ヴィノクロフ氏は、だからこそ、国際オリンピック委員会と東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の決定には理解を示す必要があると指摘し、「国際オリンピック委員会も言っているように、とにかく、重要なのは大会を開催することだ」と述べている。「新型コロナによって世界中で700以上の国際大会が中止されています。ロシア国内だけでもおよそ60の大会が中止されました。また現在ストックホルムで開かれているフィギュアスケートの世界選手権も無観客での開催となっています。選手について言えば、もちろん、観客やファンというのはそれなりの雰囲気を作ってくれるものではありますが、応援や声援を必要とし、それで気分を上げる選手もいれば、観客など意識しないという選手もいます。観客がいない方が、集中でき、良い結果を出すということもあるのです」。
3月25日、オリンピックの聖火リレーが始まるが、こちらも無観客の予定となっている。日本政府は新型コロナの感染状況が安定しないことから、このセレモニーも規模を大きく縮小した。聖火リレーでは、感染防止対策が強化され、観客の集中を避けるとしている。聖火リレーは福島県でスタートし、121日間かけて、47都道府県を通過することになっている。聖火リレーにはおよそ1万人が参加する。