レバノン通貨の対米ドルレートは、1ドル2500レバノン・ポンドだったが、これが3月半ばには1万3750レバノン・ポンドにまで下落した。この通貨下落により、レバノン全土で暴動が相次いでおり、憤慨した市民らが大都市の主要道路や大通りでタイヤに放火するなどの抗議行動が再発している。
2019年10月、レバノンでは、スマホのアプリを使用した無料通話への課税案が提示されたのを受け、大規模な反政府抗議行動が始まった。世論の圧力を受け、この課税案は廃止されたが、レバノンではこの後すぐに銀行システムが破綻した。
この財政・経済危機は米国がレバノンの政治家や実業家に制裁を発動し、レバノンへの新たな制裁を定めた「シーザー・シリア市民保護法」が米国で発効したことを受けて、さらに悪化した。また、後に政府が導入した新型コロナウイルス感染防止対策とベイルート港での爆発事件のあと、情勢はさらに悪化し、2020年8月4日には首都で複数の住宅地が破壊された。こうした一連の事態を受けて、食料品や生活必需品の価格が大幅に高騰した。
レバノン政府は最近まで、予備費を使って食料品や衛生用品、ガソリンの価格上昇を抑制していた。しかし政府が制限措置を講じたにもかかわらず、失業者と最貧困層の増加を防ぐことはできず、これがレバノン全土での治安悪化を激化させることになった。
レバノンのガジ・ワズニ財務相は、ブルームバーグからのインタビューに応じた中で、レバノンには、食料品とガソリンの補助金のための資金はもうないと述べ、少しずつ国家支援のレベルを下げるとの決定が下されたが、それにより物価はさらに上昇するだろうとの見通しを明らかにした。
ベイルートの港では2020年8月4日、TNT換算で1500トンに相当する大規模な爆発が発生した。爆風で数千軒の住宅が全壊するなどの被害を受け、30万人以上が家を失った。また190人が死亡、6500人が負傷した。レバノン内務省によると、溶接作業中に港の倉庫に保管されていた2700トン以上の硝酸アンモニウムに引火して爆発を引き起こした。
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