2020年末、トランプ前大統領政権が中国のハイテク企業に制裁を発動し、米国の企業に対し、中国の複数の製造企業との取引や技術共有を禁じた。制裁の対象となった企業のリストには、通信機器大手ファーウェイや中国最大の半導体製造メーカー、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル(SMIC)社なども含まれた。サイト「日経アジア」は、ファーウェイ・テクノロジーズのエリック・シュー会長は、全体的な半導体不足と電化製品の価格高騰の主な原因は、中国企業に対する米国の制裁だと考えていると伝えている。
その結果、多くの企業が、サムスン電子や台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)など他の企業と取引を開始した。米国は現在の状況は極めて深刻だと見ており、4月12日、バイデン大統領は米国の主要な通信技術、マイクロエレクトロニクス、自動車製造企業の代表と、世界的な半導体不足をテーマにビデオ会議を開いた。
さらにこの状況に追い打ちをかけたのが、日本で発生した半導体工場の火災である。2020年10月の末、カーナビゲーションを含むオーディオインターフェイスの要となる音響関連の半導体を製造している旭化成マイクロシステムズ(AKM)の工場で火災が発生した。この工場の再建工事には丸1年かかると見られている。一方、3月に発生した、自動車向けの半導体製造大手ルネサスエレクトロニクスの那珂工場での火災は、世界的な半導体不足をさらに深刻化するとして懸念を呼んだ。
半導体供給に問題が生じていることについては、フォード、フォルクスワーゲン、ホンダ、現代、ヴォルヴォ、日産、三菱などの自動車企業が公表している。
半導体供給に関する危機的状況がどれくらい長期化するのか、またこれが自動車産業全体にどのような影響を及ぼすのか。「スプートニク」のこうした疑問について、調査会社「アフトスタット」のアンドレイ・トプトゥン分析部長は次のように答えている。
「半導体という言葉は、電子部品において非常に幅広い解釈ができるものです。中でももっとも複雑な構造をしているのがチップと呼ばれるプロセッサ(集積回路)です。今、自動車製造で見られているのは、他でもないプロセッサの不足です。2020年末から2021年初頭にかけて、一連の大手自動車メーカーが、世界中にある工場で一時操業停止すると発表し、その理由として、プロセッサの不足を挙げています。しかしすべてのメーカーにこの問題が生じているわけではありません。大多数の工場やメーカーは、今のところ、なんとか問題に対処できている状態です。2021年の第1四半期、世界では2,089万台の小型車と小型商用車の新車が販売されました。これは1年前よりも21.9%多い数字です。もっとも、2019年の第1四半期の結果は下回っています。概して、半導体供給の緊張が緩和されるのは、2022年になると考えられています」。
「世界でガソリン車が廃止され、電子自動車が使われるようになることでプロセッサの需要がさらに高まることになります。しかし、それでなくても、新たなシステムの導入と従来のシステムや部品が、大々的に、プロセッサで制御される電子式に変換されていることにより、自動車製造におけるチップの長期的な需要傾向は速いテンポで進んでいます。レーンマーキングシステム、衝突防止装置、ブラインドスポットモニター、照明制御システム、あらゆるコントローラーなど、こうしたすべての電子機器がプロセッサで制御されています。そしてその機器が複雑なものであればあるほど、プロセッサは高価なものになります」。
半導体不足はゲーム業界にも影響を及ぼすようになっている。ソニー・インタラクティブ・エンターテイメント社のジム・ライアン社長は、プレイステーション5に対する需要について、2021年の11月から12月にかけてのホリデイシーズンまでに確実に保障できるかどうか分からないと述べている。
これより前、ブルームバーグは半導体不足によるゲームコンソール不足は2021年末まで続くだろうとの見通しを示していた。
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