今回の訓練の会場の一つとなっているのが、長崎県にある相浦駐屯地である。ここには水陸機動団が設置されているが、この水機団は離島の防衛を目的に、米国の海兵隊をモデルに特別に編成されたものである。また相浦駐屯地は、日本と中国の係争地である尖閣諸島から1000キロ以内の距離に位置している。
またこれ以外の会場となっているのは、九州の霧島演習場、東シナ海の海上および上空である。
日本の自衛隊、米国の海兵隊、フランス陸軍から最大300人が参加する今回の共同演習では、ヘリコプターからの上陸、離島を含む海岸への海兵隊の上陸、市街戦を想定した戦闘訓練、艦船の制圧などの訓練が行われている。演習には、戦闘機、MV22オスプレイ、日本の潜水艦、艦艇10隻(日本の艦艇6隻、フランスの艦艇2隻を含む)が参加している。
今回の共同訓練について、中国社会科学院北東アジア研究所の笪志剛所長は「スプートニク」からのインタビューに答えた中で、これまで日本は中国を牽制するために、主に米国に依存してきたが、現在はこの日米の軍事同盟に、フランスなど欧州の国が加わるようになっていると指摘する。
日本は中国を抑制することを目的に、米国との軍事同盟関係を強化すると同時に、欧州の大国の軍事力をも呼び込もうとしています。さらにここにインドが加わる可能性も除外できません。離島防衛を目的とした訓練が、日中の係争地となっている島々に関連したものであることは明らかです。こうした演習は、地域の平和と安定を損ねるだけでなく、多国間の貿易経済協力、インド太平洋地域の統合にも損害を与えるものです。
一方、ロシア科学アカデミー欧州研究所フランス研究センターのユーリー・ルビンスキー所長は、「スプートニク」からの取材に対し、今回フランスが日米豪の訓練に参加を決めた理由について、中国の脅威をにらんだ日米豪印4カ国による連携枠組み「QUAD(クアッド)=英語で4の意味」に対し、フランスが好意的な立場を占めていることをアピールする狙いがあると説明する。
米中の対立は、EU諸国とEU離脱後の英国に対し、深刻な問いを投げかけました。それはこの米中の対立においてどちらの立場に立つのかという選択を迫るものです。そこでEU諸国と英国は、自らの立場を明確にしなければならなくなったのです。とりわけこのことは、欧州との関係修復を図り、NATO(北大西洋条約機構)との緊密な協力関係への回帰を明言したバイデン大統領就任後、きわめて重要な問題となりました。現在、米国は、独自のルールを中国に強いるため、欧州諸国の一致した行動を必要としています。一方で、ドイツやフランスをはじめとする欧州のほとんどの国が、中国とかなり強大な貿易経済関係を持っています。もちろん、フランスは『クアッド』に関心を持っていることをアピールしたいだけでなく、米国をはじめとするこれらの大国に、フランスが価値あるプレーヤーだということを認めてもらおうとしているのです。
フランスは、ラファイエット級フリゲート艦「シュルクーフ」と強襲揚陸艦「トネール」を含む海軍の艦艇をインド太平洋地域に派遣し、6ヶ月にわたって駐留させることにしている。また「シュルクーフ」と「トネール」はベトナム、シンガポール、マレーシア、スリランカ、インドネシアに寄港することになっている。