バベレス氏は、宇宙開発は「新たな段階に入った」とし、主な争いは米国と中国の間で展開されていると指摘している。米国は2020年代末までの月面着陸を目指しているほか、火星への飛行に向け準備を進めている。一方、すでに月面と火星に探査機を着陸させている中国は、2030年までに有人火星ミッションを行う計画である。
「宇宙開発の再燃は、米中対立による新たな冷戦と切り離せないものである」とバベレス氏は書いている。米ソの冷戦時代にも、両者の対立の中心となっていたのが核兵器と並んで宇宙の開発であった。そして現在、宇宙は米中の対立の行方を決定づける役割を担っているとバベレス氏は見ている。というのも、宇宙への大量破壊兵器の配備を禁止する国際的な合意があるにもかかわらず、大きな軍事力を持つあらゆる国に宇宙を管轄する組織が作られているからである。
バベレス氏は、現在、宇宙はデジタル経済にとって非常に重要なインフラになっており、国家間、大陸間の競争における決定的な役割を果たしている点に注意を向けるよう訴えている。そして最後に、宇宙は、技術、経済、軍事同様、宇宙分野で大きな力を持つ国々の戦略的自律性の主要な要素の一つとなっていると結論づけている。
ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が、米中間の新たな冷戦勃発の危険について発言した話題については、「スプートニク」の過去の記事からお読みいただけます。