カナダのアルバータ大学の研究者らは、コロナウイルスの患者128人の血液を調査した。その中には集中治療室の重症患者をはじめ、中程度の症状の人や軽症の人、検査のために病院を訪れた人などが含まれた。
症状が重くなるにつれて、患者の血中には、未発達で、形成されたばかりの赤血球が多くなることが明らかとなった。健康体の人には未発達の赤血球は骨髄にあり、血中には存在しないか、または1%以下程度しかない。しかし、コロナウイルスの重症患者の血中では、これらの細胞の容量が60%に達している。こうした過剰な状態では、身体はさまざまな方法で血中の酸素レベルを十分に保障しようとする。
しかし、平均120日生存する発達した赤血球だけが酸素を運ぶということに問題がある。さらに、未発達の赤血球はコロナウイルス感染症に非常に耐性が弱いことが判明した。ウイルスが未発達の赤血球を攻撃・破壊することから、身体は発達した赤血球が死亡しても新しい細胞に取り替えることができず、血流で酸素を送る力が低下する。
研究者らは、赤血球が成長し、血中の酸素を「送り出す」ようにするため、コロナウイルスに対する未発達の赤血球の感度を下げるさまざまな製薬をテストした。その結果、まさにそうした効果を、抗炎症薬のデキサメタゾンが持つことを解明した。同製薬によって、治療期間が短縮し、コロナウイルスによる死亡率を低下させることに成功した。