育休取得の規則がより柔軟に
2022年4月から、企業は育休取得対象の男性に対し、育休の制度について説明し、取得の意向を個別に確認することが義務付けられる。また企業側は、入社時に、子供が生まれたときに育休を申請する可能性があるかどうかついて尋ねなければならない。男性は出産日から8週間の間に、最大4週間の育休を取得することができるが、より取得しやすくするため、分割することが可能となっている。また申請期限についても、これまでは「1ヶ月前」の申請が必要であったが、「2週間前」に変更される。加えて、育休を取得できなかった「働いて1年未満の非正規雇用」についても、女性同様、男性も育休が取得できるようになる。また2023年4月からは、大企業(従業員が1,001人以上)は、男性の育休取得率の公表が義務付けられる。日本政府は、2025年までに男性の育休取得率30%を目指しているが、厚生労働省のデータによれば、2019年の取得率はわずか7.48%となっている。
小泉進次郎環境相の育休取得も空気を変えることはできず
2020年1月、小泉進次郎環境相(当時38歳)は、男性閣僚としては初めて育休を取得した。もっとも、期間は2週間で、リモートワーク(在宅勤務)を条件としていたが、当時、小泉氏は「わたしの育休をきっかけに、環境省の中でも皆が臆することなく、育休を取得しやすい働き方が進むことを期待する」と述べた。一方で、自身が育休取得を決めたことについては、批判もあったと明かしている。
最近は世界の有名人の間でも、育児休業を取る男性が増えてきている。米フェイスブックの最高経営責任者であるマーク・ザッカーバーグ氏、歌手のカニエ・ウェスト、英国のウィリアム王子などがその例に挙げられるが、しかしこれが世界の主流になりつつあるとは言えない。
日本の男性は家事や育児を妻に任せている
男性がなぜ、法で認められている育休を取らないのかについて、ロシア高等経済学院社会学科のエレーナ・ロジェストヴェンスカヤ教授は、次のように説明している。
「長期休暇を取ることによって、女性は資格を失ってしまいますが、男性にも同じようなリスクはあります。良い企業で働くには、常に競争力を持っていなければならないのです。加えて、現在はパンデミックが影響し、皆、仕事を失うことを恐れています。一時的であれ、職場を離れるということは、同僚に自分の席を明け渡すということを意味します。また、従業員が出来上がったシステムの一部となっている場合、そのシステムの中で働いている人全員に問題を与えてしまうことになります。一方、日本社会について言えば、概して、父親というものは料理から育児まで家事には参加していません。自分の役目は家計を支えることであり、そのほかのことは妻に任せているという男性もいますし、育児は母親の仕事であり、育休を取ってもそれほど意味がないと考える男性もいます。しかしもっとも一般的な理由は、周りに育休を取得している人がいないため、上司に反対されたり、同僚から嘲笑されたりするのが嫌だというものです」。
Yahoo!ニュースによれば、厚生労働省の調査では、過去5年間に育休に関する制度を利用しようとした男性の26.2%が、育児休業などを理由にした嫌がらせ「パタニティハラスメント(パタハラ)」被害の経験があることが分かった。
その他の国の状況
スウェーデンでは、通算480日間、育児休業することが可能となっている。父親と母親がこの480日間をどう分割するかはそれぞれの家庭で異なるが、このうち相手に譲ることができない日数が90日あり、これは、利用しなければ消滅してしまうことになっている。スペインでは、2021年から、育休の期間が12週間から16週間に延長された。加えて、最初の6週間は、出産あるいは養子縁組後、両親が一緒に取得することが法で義務付けられている。また韓国では、雇用労働部長官が、育休を取得する男性が大幅に増加したことを明らかにしている。それによれば、2020年、男性の育休取得率は前年に比べて23%増加したという。男性の育休取得が進んでいる理由については、国家の政策だけでなく、父親と母親の両方が子育てに最大限に参加したいという希望を持つようになっているからだとされている。
ロシアでは、世論調査で育休をとってもよいと答えた男性は27%となっているが、実際に取得しているのはわずか2%である。その一番の理由は、日本と同様、男性が女性の「尻に敷かれている」と思われたくないというものである。