英国のCPTPPへの加盟に関する交渉開始の決定については、6月初旬、西村康稔経済再生担当相を議長としてオンライン形式で開かれた現加盟国の閣僚級会合で合意がなされた。西村大臣は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック(世界的大流行)により世界経済が低迷し、内向き志向が高まったとした上で、CPTPPはポスト・コロナ経済を、より強靭で、持続可能で、かつ包摂的なものにするためにきわめて重要な役割を果たすと確信していると述べた。
近く、関税および物品・サービス貿易、食品製造の規則や技術的基準、投資に関する問題、報告書などに関するルールを規定する作業部会が創設される。英国は日本との間で自由貿易協定を締結した後、2021年2月にCPTPPへの加盟を正式申請していた。英国政府は、CPTPPへの加盟は、EU離脱後の世界に大きな可能性を開くものとなるとの見解を示し、これにより農産物、飲料、自動車などに対する関税が撤廃され、技術およびサービス部門の発展が促されるよう期待を表している。
英国のリズ・トラス国際貿易相は、「TPPは大きなチャンス。我が国の貿易の重心を欧州から世界の急成長地域に移すことができ、アジア太平洋地域の巨大な市場へのアクセスを広げることになる」と述べ、「我々はハイスタンダードな自由貿易のあらゆるメリットを享受できる上、国境や法律の管理を放棄する必要がない」と指摘した。
これに関連し、国際貿易の専門家で、ロシア大統領府国家経済行政アカデミーの上級講師のウラジスラフ・ギンコ氏は、EU離脱後、英国は、それまで主要だったEU市場を事実上失ったと指摘し、次のように述べている。
英国のCPTPP加盟の実現は2022年以降になると見られる。TPP加盟には、タイ、韓国、さらには中国も関心を示している。TPP創設を主導した一人であるオバマ米元大統領がこの同盟の創設について、アジア太平洋地域での中国包囲網の形成を狙ったものと位置付けてきたことを考えれば、非常に興味深いことである。
TPPは7年にわたる交渉を経て、2016年2月6日に署名された。加盟したのは、豪州、ブルネイ、ベトナム、カナダ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、チリ、日本の12カ国。しかし同じ年に米国の大統領に就任したトランプ氏が離脱を表明。これを受けて、2019年5月に米国を除いた11カ国が環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)に署名した。米国の現政権はTPPへの復帰について、まだ議論を進めるに至っていない。