聖火ランナーの木村優衣 「トライ&エラーが今の日本に一番必要」

© Sputnik / Eleonora Shumilova木村 美佐子さんと木村優衣さん
木村 美佐子さんと木村優衣さん - Sputnik 日本, 1920, 27.06.2021
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東京オリンピックまで1ヶ月を切ったが、オリンピックをめぐる激しい論争に収束の気配はない。聖火リレーのランナーはどのような想いで日々を過ごしているのか?東京の公益財団法人フォーリン・プレスセンターが主催した埼玉県のプレスツアーで、スプートニクの記者が川越市の聖火ランナー、木村優衣さんに聞いた。

木村優衣さんはどんな人?

聖火リレーコースになっている川越で、蔵造りの町並みを走るのが木村優衣さん。木村さんは生まれも育ちも川越。小江戸川越の中心地にある「蔵の宿 桝屋(ますや)」というめずらしい場所で母親と一緒に暮らしている。「桝屋」は今年で築128年となる明治時代の蔵を活用し、2019年にオープンした宿だ。伝統的な蔵に宿泊することのできる埼玉県で唯一の施設であり、建物は川越市から景観重要建造物に指定されている。

© Sputnik / Eleonora Shumilova木村優衣さん、「桝屋」の入り口
聖火ランナーの木村優衣 「トライ&エラーが今の日本に一番必要」 - Sputnik 日本, 1920, 27.06.2021
木村優衣さん、「桝屋」の入り口

木村さんは豪華絢爛な山車を先導する「手古舞(てこまい)」の役を3歳から務め、6歳からは囃子(はやし)を習って山車に乗るなど、川越の文化や伝統の中で育ってきた。世界83か国を訪れた経験と得意の言語力を活かし、「生まれ育った人間にしかわからないような川越市の魅力を世界に発信していきたいという思いが強くて、聖火ランナーに立候補した」と言う。

「折り合いをつけながら開催してほしい」 五輪について

オリンピック開催は正しい判断だと思うか?というジャーナリストの質問に、木村さんはとても難しい問題だと答えた。多くの日本人が反対している一方で、選手の目線は少し異なっている。

木村さん:「今、マスメディアの調査を見ると、日本人の半数以上が中止を希望しているというニュースがあります。けれども、私自身は聖火ランナーに選ばれて、選手側と言うと大げさですが、開催して注目を浴びる側の人間という立場での気持ちが強くなっていて、無観客で競技だけをやった場合の選手たちの気持ちと結果、観客を入れた場合の選手たちの気持ちと結果は、少なからず何かしら影響があるんじゃないかと思っています。」

© Sputnik / Eleonora Shumilova木村優衣さん
聖火ランナーの木村優衣 「トライ&エラーが今の日本に一番必要」 - Sputnik 日本, 1920, 27.06.2021
木村優衣さん

木村さん自身にとってもオリンピックは特別な意味を持っている。それは昨年7月に右膝の古傷の手術を受け、一心にリハビリと練習を重ね、聖火を手に地元を走り抜ける日を心持ちにしてきたからだ。

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木村さん:「私自身が聖火ランナーに選ばれて一番実感しているのは、例えば、公道が走れなくなって、周りに誰も観客がいないところを走るのってすごく悲しいなということで、リハビリも聖火リレーのために頑張っているという気持ちがすごく強いので、日々のエネルギーが変わってきてしまうなと思います。

選手のためのオリンピックだと考えると、やはり、観客は入れてほしいですし、オリンピックも開催してほしいと思っています。ただ、もちろん、開催する地域の人たちの気持ちも優先されるべきなので、折り合いをつけながら開催してほしいという気持ちが強いです。」

「トライ&エラーが今の日本に一番必要」 日本人へのメッセージ

スプートニクの記者は、世界83か国を訪れた経験が木村さんの人生観をどう変えたのか、その経験からどんなことを日本人に伝えたいかを尋ねた。

木村さん:「日本人に一番言いたいのは、行ってみて、自分で見てジャッジ(判断)した方がいいよということです。ほとんど世界中を回ったのですが、例えば、私がロシアやアフリカやブラジルに行くとき、必ず最初に言われるのは『危険だよ』、『行かない方がいい』です。けれど、その人は行ったことないんですよ。分からないで、イメージがすごく強いから、友だちや周りに行った人もいないから(そのように言う)。とてもコンサバティブなマインド(保守的な考え方)なんです。

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行けば、どうにかなるんですよ。行けば、地元の人たちは優しいし、悪い人ばっかりでは絶対ないです。ほとんどの人がいい人で、わずか数パーセントの事件や、悪いニュース、薬物のニュース、ネガティブな情報だけが入ってきている。だから、まず先に失敗やリスクを考えてしまうんですが、そういうのを恐れないで、まず行ってみて、自分の目で見て判断した方がいいんじゃないのと日本人には言いたいですね。」

木村さんによると、旅を始めたのは19歳とかなり遅く、最初の旅で大きな「カルチャーショック」を受けたという。そのとき「どうして海外で日本の常識が非常識と言われたりするのか」が理解できたそうだ。

木村さん:「日本人は何事も、失敗しないように、転ばないように、先に調べたり、リスクヘッジをすごく固めてから行動することが多い。ワクチンもそうですよね。周りの国をじっくり見てから行動したことは、いい面もありますけど、遅いんですよね。そうじゃなくて、トライ&エラーが今の日本に一番必要じゃないかなと思います。」

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