岐路に立つアフガニスタン:新たな紛争を回避できるか

© REUTERS / Abdul Khaliq AchakzaiЛюди с флагами талибов на границе Пакистана и Афганистана
Люди с флагами талибов на границе Пакистана и Афганистана - Sputnik 日本, 1920, 26.07.2021
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米軍の撤退後、アフガニスタンでは緊張と予測不可能な情勢が続いている。同国の大統領は、タリバンの活動と政府の対立を背景に同国を覆っている危機を克服するため、計画に従い取り組みを続けている。タリバンはさらに多くの新たな領土の占領を続け、隣国に逃げる難民の数を増加させている。

アフガニスタンは五輪に選手を派遣しつつ、カオスに対抗

東京五輪に参加のためアフガニスタンからは5人の選手が来日した。彼らは陸上競技と水泳、テコンドー、射撃競技に出場する。陸上の女子選手キミア・ユソフィさんは、「私は大会で優秀な成績を残しアフガニスタンに栄誉をもたらす初の女性になりたいのです」とコメントした。ロシアでトレーニングを積んだ水泳のファヒム・アンワリ選手は、「アフガニスタンの全選手が大会で優秀な成績をおさめ、母国の素晴らしい代表となる」ことを願っている

同じ時期、アフガニスタンのアシュラフ・ガニー大統領は、政府とタリバンの活動の対立を背景に同国が直面する危機克服のための計画に取り組んでいる。同大統領は自身の公式サイトで次のようにコメントしている。「タリバンとの紛争の政治的解決を私たち国民は何よりも願っている。最終的な目標は主権と統一、民主主義、平和、相互に連関したアフガニスタンを確立することにある。アルジェリアやイラク、レバノン、シリア、イエメンを教訓に、私たちは全面戦争の地獄へ陥ることを回避したい。そのために私たちは、攻撃と紛争の収束を図るため、タリバンにアフガニスタン政府との協同を呼びかけている。同時に私たちはパキスタンに対し、戦闘行為の停止と平和のために自国の影響と行動を行使するよう要請している」。

2014年に就任し、2019年に再選したアシュラフ・ガニー大統領は、米国で教育を受け、哲学の博士号を取得している。同大統領は、人権団体「World Justice Project」の役員の1人であり、2013年には英国誌『Prospect』の世界でもっとも優れた思想家100人に選出されている。

タリバンによる権力の完全掌握の可能性

アフガニスタンから米軍が撤退するやいなやタリバンは全国で大規模な攻撃を展開した。ニューヨーク・タイムズ紙は米統合参謀本部マーク・ミリー議長を引用し、「タリバンによる権力の完全掌握または他のあらゆるシナリオが存在する」と報じた。同議長によれば、この数ヶ月間、タリバンはアフガニスタンの420地区のうち210地区以上を管理下に置き、首都カブールと他の大都市を孤立させようとしている。

米国は、アフガニスタン政府は状況をコントロールできるようになると予想している。この間、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はアフガニスタンの状況の急激な悪化を指摘している。22日、在アフガニスタン12ヶ国大使館がタリバンに対しすみやかに攻撃を中止し、恒久的で包括的な武力行使の中止を要請した。この声明はオーストラリアとカナダ、チェコ、デンマーク、欧州連合(EU)、フィンランド、ドイツ、イタリア、日本、韓国、英国、米国の外交使節団によって作製された。

タリバンは近代的な発展モデルを国内に提示することは不可能

近い将来、何がアフガニスタンを待ち受けているか。何が停滞悪化の脅威となり、諸外国の人道支援なしに同国は危機を克服できるのだろうか。そして、アフガニスタンへの日本の財政援助に変更はないのだろうか。これらの問題に関して、「スプートニク」はロシアの現代アフガニスタン研究センターの主任研究員であるアンドレイ・セレンコ氏に話を聞いた。

アフガン タリバンが政権を奪えば追放国に 米国務長官が懸念 - Sputnik 日本, 1920, 24.07.2021
アフガン タリバンが政権を奪えば追放国に 米国務長官が懸念
「メディアのいくつかの報道では、アフガニスタンとは、終わりなき紛争や混沌、テロリズム、麻薬という印象を与えている。しかし、それは正しくない。同国の各都市ではデジタル化が積極的に進められ、道路が建設され、企業や大学、アートスタジオ、スポーツクラブが活動している。各都市には数百万人が暮らし、そのため戦闘や破壊は容認されていない。米軍の撤退後、タリバンはチャンスだと考え、権力を掌握しようとした。そして彼らは政治的和解や各国との外交や経済、政治的関係の確立で準備ができていると表明したが、それは今のところ言葉の上でしかない。他の勢力との連携、特に選挙での協力が必要だが、その確率は低いといえる。なにしろ各都市での彼らの支援レベルは極めて低く、農村部でわずかに高いくらいだ。しかし、彼らが選挙で得られる得票率は最大で30%になる。タリバンは原理主義組織であり、近代の発展モデルを提示することはできない。また、米国が駐留したこの20年でアフガニスタン社会は大きく近代化し、将来にまったく違った要求をもつ世代が圧倒的となった。彼らは、米国を好きにはならなかったが、しかし、古代への回帰は望まず、スポーツや娯楽のない、インターネットやガジェットのない生活を想像することはできない。過激派がスポーツやチェス、女性の教育を禁し、世界では一般的に非イスラムの文化的価値があるとされる遺跡を破壊したことから、アフガニスタン社会ではタリバンの悪評が強まった。しかし、彼らに政府軍が対抗することはできるだろうか。タリバンの後ろにはパキスタンが存在する。同国はある理由からタリバンの主たるスポンサーと見られている。最近、イスラマバードでアフガニスタン大使の娘が誘拐された。このことがすでに悪化しているアフガニスタンとパキスタンの関係を壊してしまった。イスラマバードのアフガニスタン大使はセキュリティー上の判断から帰国し、一方、カブールのパキスタン大使は追放された」。

アフガニスタンにおける日本への特別な関係

国連のデータによれば、現在、アフガニスタンの約1840万人が人道援助を必要としている。

数十年にわたり、同国は日本をはじめ40ヶ国超から財政的およびその他の援助を受けている。6月11日、アフガニスタンとパキスタンに関する特別代表を務める日本の高橋克彦氏は、トルクメニスタン副外相とのビデオ会談で、2021年から2024年に日本政府はアフガニスタンに対し、人道的必要性および同国の社会発展のため重要な財政支援を提供すると表明した

しかし、状況が不安定なアフガニスタンに実際に援助が行われるのだろうか。セレンコ氏は次のように語った。「米国からの財政支援は、同国での自国兵士の維持費が減少することから、増強される可能性がある。人道援助は国際機関を経由して継続されることになる。アフガニスタンの困難な状況は隣国が互いにより緊密に協力し、新しい形式を創設することを促すことになる。この間、米国とアフガニスタン、パキスタン、ウズベキスタンは、貿易拡大とビジネス関係の強化を目的とした協力のための新たな4ヶ国のプラットフォーム創設について発表を行った。日本に関しては、「中央アジア+日本」対話のフォーマットで活動を継続する可能性があり、また同様に、ウズベキスタンまたはインドとの共同が予想される。アフガニスタンは日本と特別な関係があり、その多くは2019年12月に犠牲となった中村哲医師の活動のおかげといえる。同医師は、医療に携わるだけでなく同国に病院を建設し、灌漑事業にも大きく貢献した。同医師との関係について、アシュラフ・ガニー大統領が彼の棺を運んだというエピソードは有名だ。アフガニスタンにおける日本のプロジェクトは人道的およびインフラ整備の特徴がある。私は、もしタリバンが権力の座に就いたとしても彼らが『鎖国』を行うとは思わない。もし彼らが麻薬密売以外の何かを行おうと計画しているとしたら、彼らは外国との相関関係なしに済ますことはできない。とはいえ、麻薬がいらないなら俺たちを援助しろという北朝鮮の恫喝という可能性も消えることはない」。

セレンコ氏によれば、鉱物原料、特にあらゆるタイプの電池にとって必要なリチウムの埋蔵量においてアフガニスタンは、劇的に同国経済の構造を変化させ、外国投資家を呼び込み、数百の新たな雇用場所を創出する可能性があるという。収まることのない国内の民族間の争いが障害となっているといえる。

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