最近、日本政府は、新型コロナウイルスをめぐる状況を理由に、日本人と北方四島の島民とのヴィザなし交流事業の枠内で予定されているイベントを2022年4月まで凍結すると発表した。1992年に始まったヴィザなし交流は、毎年行われることで双方が同意し、5月から10月にかけて渡航が行われていた。これまでに、この交流事業を通じて、択捉島、国後島、色丹島の8,000人以上の市民が日本を訪れ、18,000人以上の日本人が南クリル諸島を訪れた。
ミシュスチン首相の択捉島訪問そのものも日本政府の否定的な反応を招くことになったが、これはすでに政治的儀礼となっている。しかし今回は、ロシア政府が他の国の投資家をクリル諸島に招いたことが日本政府の怒りを買うこととなった。日本政府は、四島での協力は日露だけのものだと考えており、それを目的に、長い時間をかけて共同経済活動のための法的基盤について協議を重ねてきた。しかし、第3国の企業がクリル諸島に入ってくることになれば、日本が遅れを取ることになるのではないかと危惧している。
ミシュスチン首相のこの発言と関連があると断言することはできないが、8月11日、日本の茂木敏充外務大臣はロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相と電話会談を実施した。在ロシア日本大使館の発表によれば、会談は1時間におよび、2国間関係、安全保障問題、平和条約交渉、クリル諸島での共同経済活動、両国が共通して関心を持つ気候変動問題などについて意見が交わされた。
気候変動問題は、露日の経済協力関係を活性化させるチャンスとなる可能性がある。長年、気候変動問題に大きな関心を示してこなかった日本だが、ついに前向きに地球温暖化対策に取り組むことを決意し、新たなエネルギー源として水素の利活用を進めている。二酸化炭素の排出量削減政策の枠内で、日本は2030年までに水素の利用率を大幅に増加させ、年間1,000万トンにしたい考えである。またエネルギー部門以外でも、日本は水素を使った交通機関の製造を行う計画を実現している。
「ロシアには水素生産のための莫大な資源があります。しかし、ポテンシャルがあるからといって、必ず成功すると保障することはできません。「ルスアトム・オーヴァーシーズ」(ロシア国営原子力企業ロスアトム社傘下)は2021年の末に、ロシアから日本への水素供給の実験的プロジェクトのフィジビリティスタディを完了したいとしています。これについては、日本の資源エネルギー庁との間で2019年9月に合意が締結されています。EU諸国およびアジア諸国への輸出のための水素生産には、「ガスプロム」や「ノヴァテク」も関心を示しています。水素輸出プロジェクトは、日本にもっとも近い、サハリンやカムチャツカで進められていますが、その詳細はまだ明らかにされていません。しかし重要なのは、日本の水素市場への参入を競うためには、安定した供給を約束するのはもちろん、二酸化炭素の排出を最低限に抑えて水素を生産することを保障しなければならないということです。現在、世界には水素の産業生産の方法が複数存在します。わたしが思うに、ロシアにとって、もっとも展望があるものとして2つの種類があります。1つは「青い方法」で、天然ガスから作るもの、そしてもう1つは「ピンクの(または赤い)方法」で、これは原子力発電所で作るものです。二酸化炭素の排出という観点で見ると、これは「緑の方法」と同じくらい、環境にやさしいものです」。
最近、「ルスアトム・オーヴァーシーズ」でマーケティングおよびビジネス発展を担当するアントン・モスクヴィン副社長は、日本と共同で行う水素プロジェクトに関する調査結果は、1ヶ月か2ヶ月以内に発表されると述べた。またモスクヴィン副社長は、サハリンでは、水素の生産、保管、そして日本やその他のアジア太平洋地域諸国への輸送を目的に、異なる経済部門の水素生産技術を用いた水素生産のクラスターの創設が計画されていることを明らかにした。