多くの世論調査が実施され、さまざまな予想が示されているものの、選挙の結果を正確に予測することはかなり難しい。ドイツのマスコミも、15年以上にわたってドイツを率いてきた実用主義的でバランスの取れたアンゲラ・メルケル首相の後、誰か別の人物が首相の座に就くということを想像するのは、ドイツ国民にとってはなかなか難しいと指摘している。とはいえ、次期首相に就くのは、主要な政党から選出される次の3人の候補者のうちの1人と見られている。その3人とは、ドイツキリスト教民主同盟のアルミン・ラシェット党首、中道左派、ドイツ社会民主党の議員で財務大臣のオーラフ・ショルツ氏、そして環境政党「緑の党」のアナレナ・ベルボック氏である。ちなみに、9月26日に実施される選挙では、有権者は具体的な政治家ではなく、政党に投票するが、INSA研究所が実施した最新の世論調査では、キリスト教民主同盟とドイツ社会民主党が22%、「緑の党」が17%の支持率を獲得している。
「スプートニク」からのインタビューに応じた、ロシア科学アカデミー欧州研究所ドイツ研究センターのアレクサンドル・カムキン主任研究員は次のように述べている。
「少なくとも、今年の終わりまでは、ドイツが他の国との関係において、路線を急激に変更するという前提条件は見当たりません。今回の総選挙で誰が当選しようと、内閣にとっての最重要課題は、新型コロナの影響の克服、そしてロックダウンによる経済の停滞からの脱出となるでしょう。今後の経済政策に関する選挙前の議論はまだ今のところはっきりと定まっていませんが、気候変動を止めるための新技術への移行が主な議題となっています。キリスト教民主同盟とドイツ社会民主党は2030年までに、二酸化炭素の排出量を1990年の65%に削減すべきだとしていますが、対する緑の党は70%を目標にすべきだと主張しています。一方で、3政党はドイツは、欧州連合全体よりも5年早い2045年までのカーボンニュートラルの達成を目指すべきだとの考えで一致しています。しかし、ドイツ経済に脅威を与える国内問題の範囲は、グリーンテクノロジーへの移行よりもずっと幅広いもので、洪水による被災地の復興、インフレ高進、貿易収支の安定化、燃料や産業用部品の供給問題、労働市場への移民の流入、高齢化問題など、多岐にわたっています。世界経済における重心がアジアに移行しつつある中、ドイツは近い将来、世界の経済大国のトップ5という地位を死守するための戦いを強いられることになるでしょう」。
一方、2021年は、日本とドイツにとって重要な年となっている。1861年に締結した修好通商条約から160年という節目の年となるためである。カムキン氏は、「中でも、ドイツと日本の関係においては、ほとんど変化は見られないだろう」と予測する。
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