今日、日本の平和にとって軍事同盟は必要か?
2022年6月8日, 22:20 (更新: 2022年6月8日, 22:47)
© AFP 2023 / Kiyoshi Ota日本の岸田文雄首相
© AFP 2023 / Kiyoshi Ota
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日本の岸田文雄首相は、ベルリンで予定のG7サミット(26日から28日)の直後にマドリッドで開催される北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談に初めて出席することを予定している。
今回、ドイツのオーラフ・ショルツ首相と日本の岸田文雄首相が初めてG7に出席する。サミットの開催は今回で48回目を数えるが、日本は以前から参加している。そのため、すでに同会合は「定例のイベント」となっており、そこでは、現在の(政治的および経済的な)世界情勢について、先進国の共通見解、いわゆる「同期」が図られている。
岸田首相が、日本が加盟していないNATO首脳会談に「首相として」出席することには、別の事情がある。日本の専門家で政治学者、国際関係の専門家であるドミトリー・ストレルツォフ氏は、この事は大いに注目に値すると語る。
「第一に、日本政府はこれまで、いかなる軍事ブロックとも極力『距離を置いて』きている。NATO首脳会談に日本の首相が出席することは、日本政府の外交政策が、政治的・軍事的構成の強化へと発展したことを証明している可能性がある。これまで日本とNATOの関係には、世界的な問題への統一的なアプローチという戦略的な性格はなかった。現在、彼らがなんらかの具体的な軍事的協同を予定しているという事実はない。そうでなければ、日本は直ちに自らの平和憲法を改正しなければならない。しかし、現在のウクライナ情勢に照らせば、軍事ブロックであるNATOと政治的に連帯することは、岸田内閣の外交政策と完全に合致している」
一方、ロシア科学アカデミー・プリマコフ世界経済国際関係研究所の日本経済・政治グループ長であるヴィタリー・シュヴィドコ氏は、岸田首相のNATO首脳会談への出席は、単純に現実的な理由があると見ている。
「今年開催の2つのサミット(G7とNATO)の議題は、ウクライナ危機とその軍事的・経済的影響への対処であり、ほぼ同じといえる。このような複雑な問題を議論する上で日本政府は発言権を持っており、日本には『内緒』でそうして問題への決定が下されてはならないことは明らかだ。そのため、日本の首相がベルリンとマドリッドで開催される会合に出席するのはまったく矛盾はない。日本が両サミットへの参加準備をしていることは間違いない。なぜなら、これらの会合への出席は、国際舞台での日本の権威を高めるだけだからだ」
「日本は正常な国」というのは、日本の首相のお気に入りの主張といえる。この主張(かつて軍国主義だったにもかかわらず)は、第2次世界大戦の結果として、ある国が何らかの侵害を受けるようなことがあってはならないということを暗示している。また、同専門家によれば、日本政府は、グローバルな政治・軍事戦略の策定は、日本の参加を得て議論することが可能であり、またそうすべきであると考えている。
とはいえ、シュヴィドコ氏は、NATO首脳会談で日本の首相が大げさな、予想外の発言をすることはないと見ている。
しかし、同氏は、(ウクライナ危機の議論は別として)岸田首相がNATOの関心をアジア太平洋地域の安全保障問題に向ける機会を逃さないということを否定しなかった。
「日本の首相は、『アジアの課題』の重要性を強調することを繰り返し指摘している。なぜなら、支配的な路線である「欧州中心主義」は、G7の活動を含め、世界経済と政治に害を及ぼすだけだからだ。実際には、ロシアやウクライナ危機以上に、今日、この課題の現実性には中国が影響している。現在、経済および政治の上でもっとも重要なパートナーは中国だ。そのため、アジアの安全保障問題や経済分野における中国の役割に、ますます注目が集まっている。そして、NATO首脳会談に出席することは、言うまでもなく、岸田首相がこの課題について声を大にして訴えることができる『勝利のチャンス』となる」
さらに、西側の軍事同盟の首脳会談へ日本の首相が出席するという問題は、この間のバイデン米大統領の訪日時に岸田首相との合意となっている。歴史科学博士で科学アカデミー会員、政治・東洋学者のアナトリー コーシキン氏は次のように推測する。
「今日、米国政府は、日本がNATOとの行動を統一することを必要としている。少なくとも2つの面において。第一に、ウクライナでの特別軍事作戦に関して。日本は極東に新たな緊張の温床を作り、そこにロシアにとっての「第二の前線」を形成する可能性がある。それは、ロシア政府が、(極東地域に配備されている)軍事力を欧州地域に追加することを防ぐことが目的だ。つまり、ウクライナだ。さらに日本政府は、中国を威嚇するため、東アジアでの軍事演習の実施のため、NATO諸国との調整を必要としている。英国やフランス、ドイツなどの艦船はすでにこのような軍事演習に参加している。そのため、今後、米国や英国、オーストラリアが加入する新たな軍事同盟『AUKUS』に、日本を加えるという問題が提起されることを、私は否定しない」
日本はこの同盟に参加するつもりはないとすでに表明している。しかし、このような与党の姿勢(AUKUS加盟について世論を「あおらない」)は、参議院選挙を控えていることと関係があるのかもしれない。
しかし、選挙後、日本政府は見解を変える可能性がある。 NATO首脳会談に関しては、ここで岸田首相は日本の防衛予算を実際2倍に増強する予定だと発表するつもりでいると、同専門家は強調する。
一方、ヴィタリー・シュヴィドコ氏によれば、日本はなんらかの軍事同盟に参加する可能性は低いという。
「いずれにせよ、近い将来。 これまでのところ、そのような行動の必要性について噂さえ耳にしたことはない。日本政府は、何らかの厳格な義務を負うことのない二国関係を好むが、そうした義務は、さまざまな軍事同盟では通常なら必ず明文化される」
しかし、同専門家は、G7サミットでは、世界的な景気後退やエネルギー資源の供給リスクなど、もっとも緊急性の高い経済問題が焦点になると予想する。