北朝鮮は韓国をミサイル斉射で攻撃する準備を進めているのか?

© AFP 2023 / Jung Yeon-Jeミサイル斉射
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北朝鮮が活発に自国のミサイルプログラムを進化させている。韓国国防研究院の統計によれば、北朝鮮のミサイル開発者は2022年の初頭から33回に及ぶ発射実験を行った。実験が行われているのはさまざまなタイプのミサイルである。とはいえ、最近は射程範囲が400〜600キロの短距離ミサイルの実験を行う傾向が指摘されている。
そんな中、2022年6月5日に行われた発射実験は通常のものとは異なっていた。この日の実験では、射程範囲110〜670キロまでのミサイル8発が、国内4カ所から同時多発的に発射されたのである。発射実験は現地時間の09時08分から09時43分まで、35分にわたって行われた。ミサイルがどのような種類のものであったのかについては現時点ではわかっていないが、おそらくKN-09とKN-25であるとされている。これらのミサイルはこれまでにも発射実験が行われてきたものである。

短時間での韓国へのミサイル斉射

ミサイルの発射実験には、さまざまな目的がある。それはたとえば、新型ミサイルの運用性の確認、あるいはミサイルや発射装置の設計上の改良などであるが、しかし、こうした発射実験は一般的には個別に行われるものである。それが今回のように、複数のミサイルを同時に発射する斉射の実験の場合は、別の目的があるのではないかと考えられる。それはたとえば、臨戦態勢の確認、警戒体制時にミサイル発射装置を扱う人員の教練、そしてミサイル発射操作の訓練などである。
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北朝鮮のミサイル発射
2022年6月5日に行われた発射実験は、1日にきわめて短い時間で実施されたもっとも大規模な斉射である。ミサイルの発射は、平壌の順安地区、价川、東倉里、咸興の4つの場所から行われた。それぞれの発射位置の間の距離はかなり大きい。平壌から价川までは67キロ、東倉里までは130キロほど、そして咸興までは178キロである。
発射されたミサイルは東の方向に110キロから670キロ飛行し、日本海に落下した。おそらく、それぞれのミサイルは海上の特定の座標を目標とし、落下の正確性が目視されたものと見られる。
これらのミサイルは韓国国内の目標物への攻撃を目的としたものだと考えられる。理論的にこれらのミサイルは中国、ロシア、韓国領内の目標物を破壊することができるが、日本にまで到達することはほぼない。平壌地区から670キロ飛行したミサイルは、対馬海峡の東側に到達するが、これらのミサイルがそれ以外の国に到達することはない。しかし、中国は北朝鮮のもっとも有力な同盟国であり、ロシアも北朝鮮にとっては友好国であることを考えれれば、残るは韓国だけである。ミサイルの射程距離は、北はソウル、南は釜山までの目標物を攻撃するに十分である。
またこの一斉射撃を行う複数の発射場所の配置や射程距離が異なることなどからも、今回、北朝鮮は韓国の目標物に対する斉射の訓練を行った可能性がきわめて高い。北朝鮮のミサイル開発者が一斉射撃の実施時間を削減しようとしているのは明らかである。2021年、KN-25の発射実験では、1つの発射装置からの発射の間隔を大幅に短縮したことが確認された。8月24日の発射実験では、その間隔は17分、10月31日の実験では3分、そして11月28日には30秒にまで短縮されている。そこで、考えられるのは、同様の課題の解決に向けた動きが、ミサイル軍の司令部レベルで行われているということである。発射にかかる時間が大幅に短縮できればできるほど、配置している発射装置が制圧される可能性が少なくなる。35分で斉射を行えるというのはかなりよい。しかし、これを10〜15分、あるいはそれ以下にまで短縮するためにさらなる発射実験が行われるだろうと推測される。
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空港で敵国の空軍部隊をたたく

ミサイルの一斉射撃の実験は、北朝鮮が明確に韓国との戦争に備えているであろうと推測するのを可能にするものである。北朝鮮は自国の計画を極秘にしている。しかし、これらの計画の実現のために使われている兵器から判断すれば、こうした計画があるとみなすことができる。
北朝鮮のミサイル開発はすでに防衛のレベルに達している。敵になると想定される国は、北朝鮮軍が、主要な軍事施設へのミサイル・核攻撃を行うことができる異なる種類の弾道ミサイルを保有していることを知っている。北朝鮮に対する軍事作戦は非常にリスクの高いものとなりつつある。もしその目的が、純粋に防衛を主眼としたものであれば、ここで止まることができるはずである。
しかし、ミサイルプログラムは、ミサイルとその運用システムのさらなる改良を目指し、さらに発展している。北朝鮮司令部は短時間で大々的な斉射を行える能力を獲得すべく、尽力している。これは韓国の軍事施設への圧倒的なミサイル攻撃を行う計画の枠内でのみ意味を持つ。こうした攻撃を行えば、地上軍の大々的な攻撃をうまく進めていくことになるのである。
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ミサイルはこのような計画の鍵となる。というのも、北朝鮮の空軍部隊はかなり弱いからである。北朝鮮の保有する爆撃機は、ミグ29、ミグ21、ミグ23、スホイ7、スホイ25、J-5、J-6、J-6など、非常に古いタイプのものばかりである。もっとも新しい北朝鮮の爆撃機ミグ29ですら、1988年から1991年にかけて供給されたもので、すでに30年以上が経過している。爆撃機もエンジンもかなり老朽化している。これらの爆撃機の部品もどうやら供給されていないようである。これらの爆撃機はまだ飛行することはできるが、戦闘能力はもはや低い。北朝鮮は、新たな爆撃機を獲得することもできず、製造することもできない。
こうした理由から、北朝鮮は、軍事行動においてこれらの爆撃機に代わるものとなる弾道ミサイルに賭けているのである。北朝鮮軍は韓国空軍と、韓国の空軍基地に配備している米国軍を殲滅できなければ、攻撃を開始できないのである。そのためにはすべての空軍基地を、一気に、素早く、そして同時にミサイル攻撃することが必要なのである。もし、10〜15分で攻撃を行うことができれば、韓国空軍も防衛軍もこれには対応できず、深刻な損害を受けることになるだろう。
そしてその後、ミサイル攻撃の目標は軍事基地、軍事施設、地上攻撃支援のために集まった部隊に移されることになる。

軍用道路は常に危険

戦争の計画というのはどのようなものもリスクを伴う。北朝鮮が日本に対して、また日本国内の米軍基地に対して、ミサイル攻撃を行うことはないだろう。北朝鮮にとっては日本と紛争状態に入ることは有益ではないため、戦争を開始する形式的なきっかけを日本に与えないようにしている。
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しかし、この場合、米国は空の戦いにおいて優位となり、北朝鮮の攻撃を食い止める可能性がある。そこで、北朝鮮はかなり優位な条件の下でのみ、軍事行動を開始することができると言明することができる。その条件とは、たとえば、中国と台湾の間で軍事紛争が起きた場合などである。その場合、米国は、自国の軍部隊、主に空軍部隊を、台湾と韓国の間の軍事行動に振り分けなければならなくなる。中国の空軍は規模が大きいことから、地域の米空軍の大部分が台湾の支援のために派遣されることになる。そうなると、韓国向けの爆撃機は少なくなり、北朝鮮が戦争で勝利する一定のチャンスが出てくる。とはいえ、その保証はない。
この戦争を回避することはできるのか?考えられる唯一の方法とは次のようなものである。第一に、北朝鮮の存在の権利を認め(日本からも)、あらゆる制裁を解除すること。そして第二に、北朝鮮と韓国の間の政治対話を「一国二制度」の原則に基づいた協力へと向かわせること。北朝鮮と韓国の政治上の争いが平和的に解決されれば、戦争は必要なくなるだろう。
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