https://sputniknews.jp/20220629/nato-11760218.html
日本はNATOとの協力により、よりよい状況になるのか?
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2022年6月28日から30日にかけて、スペインのマドリードでNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議が開かれている。今回の首脳会議には、NATO史上初めて、日本、韓国、豪州、ニュージーランドなど、アジア太平洋地域諸国の代表が招かれており、日本の岸田文雄首相もこれに出席する。 2022年6月29日, Sputnik 日本
2022-06-29T18:00+0900
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こうした動きに関し、2つの疑問が湧き上がってくる。1つ目はなぜそれが必要なのかということ。そして2つ目はなぜそれが日本にとって必要なのかというものである。グローバルなNATONATO首脳会議を他でもないこうした形式で開催する緊急の必要性があるのは疑いようのないことである。しかし、それが声明として発表されることはないだろう。NATO指導部はもうかなり以前から、自らの計画や意向を外交的な文言でカムフラージュする方法を身につけている。さらに、NATOというものが何より軍事同盟であることを忘れてはならない。首脳会議では、極秘の協議や会合が数多く行われ、極秘の合意が数多く結ばれることになるだろう。しかしその内容が明らかになるまでには時間がかかると思われる。しかし、NATOの首脳会議が、なぜ日本やその他のアジア太平洋地域諸国が参加の下で開かれる必要性があるのかについて予測することは可能である。それはまず、共通の指令の下で、米国の同盟国のすべての軍事力を結集させることが可能となる「グローバルなNATO」を作るためである。これで機動作戦を行うことができるようになるのである。米国はもはや、欧州でも、アジアでも、同じように強い国ではいられず、同盟国の助けを必要としている。つまり、欧州で急激な軍事的な危機が生じた場合、「グローバルなNATO」は軍事同盟の主な部隊を欧州に配置し、有利な立場に立つことができるのである。同様に、たとえば台湾問題など、アジアで軍事的な危機が生じた場合もそうである。台湾問題は非常に深刻なものである。というのも、軍事危機が訪れた場合、米国の同盟国のすべての武力を集結させることなく、台湾の防衛を行うことは不可能だからである。そのためには、参加国の合意といくつもの公式的な問題の解決が求められ、おそらくマドリードでの首脳会議でもこれらについて話し合われるものと見られる。もう一つは、米国のすべての同盟国を、軍部隊や艦隊の管理、諜報活動、そしてミサイル防衛において一つのシステムに統合させることに関する問題である。とりわけ、ロシアと中国を確実に迎撃する一種のミサイル防衛システム地帯のようなミサイル防衛の開発については非常に重要である。この地帯には、インド洋と太平洋上の隙間があり、この隙間を埋めるためには、アジア太平洋地域の米国の同盟国の参加が必要なのである。さらに、マドリードでのNATO首脳会議で注視されるもっとも熱い問題は、ウクライナ情勢を背景にした、NATOの東側の境界での軍備増強である。そこで、日本、韓国、豪州、ニュージーランドは、NATOを欧州で強化させることを目的とした協力を提案するか、軍備や兵器の供給を申し出る可能性がある。今回のNATO首脳会議は、最近の出来事によって大きく損なわれた世界の戦略的情勢に対するコントロールを取り戻すための試みに関係しているのは間違いない。プラスとマイナス日本政府はおそらく、NATO首脳会議への出席に同意し、「グローバルなNATO」への加盟を見据えながら、自国の安全を強化しようとしているのである。日本のとっての大きな利点は、次のようなものである。まず、北朝鮮、中国、ロシアからのミサイル攻撃を守るという一種の保証を与えてくれる共通のミサイル防衛システムに参加できることである。これは日本にとってもっとも肝要な問題である。次に、係争中の島をめぐる中国との対立において立場を強化できることである。もし日本が「グローバルなNATO」に加盟すれば、中国は日本に対して武力行動を起こすことが困難になるだろう。あらゆる決定にはポジティブな面とネガティブな面があるものである。しかし、「グローバルなNATO」に加盟するという日本の決定には、プラスの面よりも、マイナスの面が多いのは明らかである。第一に、NATOは日本を、防衛とは程遠い軍事行動に参加させることになる。NATO最大の敵であったワルシャワ条約機構が解体した1990年から、NATOはきわめて攻撃的な政策を行い、ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン、リビアなど、一連の軍事紛争に参加してきた。NATOの作戦の中で、唯一、もっぱら防衛的な性格を持つものは、2012年12月から現在に至るまで行われている「アクティブ・フェンス」作戦だけである。この作戦の枠内で、NATOはトルコに対し、シリアのミサイルから防衛することを目的として、地対空ミサイル「パトリオット」を提供した。次に、NATOはその作戦の中で、弱体化した軍を持つ国々に対し、成功を収めてきた。軍備が整っていないながらも戦う意志のあった「タリバン」との戦争は、NATOにとって失敗に終わった。NATOはアフガンの同盟国を見放し、その運命を勝者に任せ、アフガニスタンを去ったのである。そして3つ目は、「グローバルなNATO」の創設は事実上、世界を対立する2つの陣営に分断することを意味するということである。このような軍事同盟を作ることによって、ロシアや中国に軍事力を増強させ、またそれにより、この2つの国を早い段階で同盟国にさせることになる。またそこには、他に選択肢が残っていない北朝鮮も参加するだろう。その結果、日本は露中の軍事同盟との軍事対立に巻き込まれる可能性があり、しかも、「タリバン」のパルチザンに対処できず、アフガニスタンから逃げ出した軍事同盟の側に立つのである。ここで、最新の武器を備え、戦う強い意志を持つ多くの国々が、予想される敵となるだろう。つまり、これは日本にとって非常にネガティブなシナリオとなるのである。NATOと協力するという決定は、日本をより安全にするのではなく、むしろその状況を大きく悪化させる。つまり、日本の国益からはまったく外れた理由による戦争に巻き込まれる危険性が生じるのである。
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2022年6月29日, 18:00 (更新: 2022年6月30日, 16:45) 2022年6月28日から30日にかけて、スペインのマドリードでNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議が開かれている。今回の首脳会議には、NATO史上初めて、日本、韓国、豪州、ニュージーランドなど、アジア太平洋地域諸国の代表が招かれており、日本の岸田文雄首相もこれに出席する。
こうした動きに関し、2つの疑問が湧き上がってくる。1つ目はなぜそれが必要なのかということ。そして2つ目はなぜそれが日本にとって必要なのかというものである。
NATO首脳会議を他でもないこうした形式で開催する緊急の必要性があるのは疑いようのないことである。しかし、それが声明として発表されることはないだろう。
NATO指導部はもうかなり以前から、自らの計画や意向を外交的な文言でカムフラージュする方法を身につけている。さらに、NATOというものが何より軍事同盟であることを忘れてはならない。首脳会議では、極秘の協議や会合が数多く行われ、極秘の合意が数多く結ばれることになるだろう。しかしその内容が明らかになるまでには時間がかかると思われる。
しかし、NATOの首脳会議が、なぜ日本やその他のアジア太平洋地域諸国が参加の下で開かれる必要性があるのかについて予測することは可能である。それはまず、共通の指令の下で、米国の同盟国のすべての軍事力を結集させることが可能となる「グローバルなNATO」を作るためである。これで機動作戦を行うことができるようになるのである。米国はもはや、欧州でも、アジアでも、同じように強い国ではいられず、同盟国の助けを必要としている。つまり、欧州で急激な軍事的な危機が生じた場合、「グローバルなNATO」は軍事同盟の主な部隊を欧州に配置し、有利な立場に立つことができるのである。
同様に、たとえば
台湾問題など、アジアで軍事的な危機が生じた場合もそうである。台湾問題は非常に深刻なものである。というのも、軍事危機が訪れた場合、米国の同盟国のすべての武力を集結させることなく、台湾の防衛を行うことは不可能だからである。
そのためには、参加国の合意といくつもの公式的な問題の解決が求められ、おそらくマドリードでの首脳会議でもこれらについて話し合われるものと見られる。
もう一つは、米国のすべての同盟国を、軍部隊や艦隊の管理、諜報活動、そしてミサイル防衛において一つのシステムに統合させることに関する問題である。とりわけ、ロシアと中国を確実に迎撃する一種のミサイル防衛システム地帯のようなミサイル防衛の開発については非常に重要である。この地帯には、インド洋と太平洋上の隙間があり、この隙間を埋めるためには、アジア太平洋地域の米国の同盟国の参加が必要なのである。
さらに、マドリードでのNATO首脳会議で注視されるもっとも熱い問題は、ウクライナ情勢を背景にした、NATOの東側の境界での軍備増強である。そこで、日本、韓国、豪州、ニュージーランドは、NATOを欧州で強化させることを目的とした協力を提案するか、軍備や兵器の供給を申し出る可能性がある。今回のNATO首脳会議は、最近の出来事によって大きく損なわれた世界の戦略的情勢に対するコントロールを取り戻すための試みに関係しているのは間違いない。
日本政府はおそらく、NATO首脳会議への出席に同意し、「グローバルなNATO」への加盟を見据えながら、自国の安全を強化しようとしているのである。日本のとっての大きな利点は、次のようなものである。
まず、北朝鮮、中国、ロシアからのミサイル攻撃を守るという一種の保証を与えてくれる共通のミサイル防衛システムに参加できることである。これは日本にとってもっとも肝要な問題である。
次に、係争中の島をめぐる中国との対立において立場を強化できることである。もし日本が「グローバルなNATO」に加盟すれば、中国は日本に対して武力行動を起こすことが困難になるだろう。
あらゆる決定にはポジティブな面とネガティブな面があるものである。しかし、「グローバルなNATO」に加盟するという日本の決定には、プラスの面よりも、マイナスの面が多いのは明らかである。
第一に、NATOは日本を、防衛とは程遠い軍事行動に参加させることになる。NATO最大の敵であった
ワルシャワ条約機構が解体した1990年から、NATOはきわめて攻撃的な政策を行い、ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン、リビアなど、一連の軍事紛争に参加してきた。NATOの作戦の中で、唯一、もっぱら防衛的な性格を持つものは、2012年12月から現在に至るまで行われている「
アクティブ・フェンス」作戦だけである。この作戦の枠内で、NATOはトルコに対し、シリアのミサイルから防衛することを目的として、地対空ミサイル「
パトリオット」を提供した。
次に、NATOはその作戦の中で、弱体化した軍を持つ国々に対し、成功を収めてきた。軍備が整っていないながらも戦う意志のあった「タリバン」との戦争は、NATOにとって失敗に終わった。NATOはアフガンの同盟国を見放し、その運命を勝者に任せ、アフガニスタンを去ったのである。
そして3つ目は、「グローバルなNATO」の創設は事実上、世界を対立する2つの陣営に分断することを意味するということである。このような軍事同盟を作ることによって、ロシアや中国に軍事力を増強させ、またそれにより、この2つの国を早い段階で同盟国にさせることになる。またそこには、他に選択肢が残っていない
北朝鮮も参加するだろう。その結果、日本は露中の軍事同盟との軍事対立に巻き込まれる可能性があり、しかも、「タリバン」のパルチザンに対処できず、
アフガニスタンから逃げ出した軍事同盟の側に立つのである。
ここで、最新の武器を備え、戦う強い意志を持つ多くの国々が、予想される敵となるだろう。つまり、これは日本にとって非常にネガティブなシナリオとなるのである。NATOと協力するという決定は、日本をより安全にするのではなく、むしろその状況を大きく悪化させる。つまり、日本の国益からはまったく外れた理由による戦争に巻き込まれる危険性が生じるのである。