「今日の香港、明日の台湾、そして明後日の沖縄」の危惧感 正当性はどこまで?
2022年6月24日, 16:40 (更新: 2023年9月28日, 21:09)
© AP Photo / Guang Niu中国海軍
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沖縄県は、今年末までに、沖縄への武力攻撃予測の事態を想定した訓練を初めて実施する計画である。今回行われるのは、先島諸島からの住民の避難についての詳細を確認するための図上訓練である。これまでに、「国民保護法」に基づいた同様の訓練で、テロなどの「緊急対処事態」を想定した防護策がとりまとめられている。
計画されている訓練の本質
訓練は沖縄周辺の情勢が緊迫した状態から、国が「武力攻撃予測事態」を認定した後までの時間的な経過を想定し、先島諸島から住民を避難させるための関係機関との連携を確認するものである。
計画のとりまとめには、自衛隊、警察、国が参加することになっている。先島諸島には、台湾の北東部から170キロの地点に位置し、日本、台湾、中国の間で領土問題となっている尖閣諸島が含まれている。
沖縄の多くの住民(とはいえ、もちろん全員ではない)が県内の米軍基地の設置に反対しているが、外部からの攻撃を受けた際、沖縄が日本の本土から離れていること、また沖縄の島々が海上に点在していることによる脆弱性については理解している。
今日の香港、明日の台湾、そして明後日の沖縄
実際、日本は外部からの武力攻撃を恐れているのだろうか、それともこれは行き過ぎた警戒なのだろうか。「スプートニク」は政治・軍事分析研究所のアレクサンドル・フラムチヒン副所長にお話を伺った。
「これはおそらく、想定可能である中国からの攻撃を想定したものだと思います。しかし、今後、近い将来、そのようなことが起こることは考えにくいです。日本人はおそらく、彼らが言うところの、『今日の香港、明日の台湾、明後日の沖縄』という表現に基づいているのでしょう。この表現は、中国で、海上保安機関や海警局に武器の使用を認めた海警法が採択され、東アジアの緊張が強化された香港の『傘の革命』のときにミームとして現れたものです。ちなみに、現在、台湾のインターネット上では、「今日のウクライナ、明日の台湾」という別の表現も生まれています。中国のメディアは、琉球の島々は太古の昔から中国の領土であるのに、日本は米国の庇護を受け、それを自分のものにしたと、繰り返し主張してきました。
しかし、中国は注意深く、狡猾で、そして何ら急いでいません。中国は、米国からの制裁という苦い経験をしており、現在、西側諸国が対露制裁に関する問題で、ときに自身も損害を被るほど連帯しているのを目の当たりにし、激しい行動は起こさないよう注意しています。それから自国のイメージという問題も無関心ではないでしょう。そんなわけで、中国が近い将来、軍事行動を起こすことはないでしょう。ただし、日本領海への船の侵入活動を弱めることもないでしょう。ですから、沖縄で計画されている訓練は、将来的に自国を守る一つの手段であると同時に、中国に対し、日本は油断しておらず、抵抗する準備があるということを証明するものなのです。
中国は台湾より先に尖閣諸島に攻撃するのか?
中国が台湾より先に尖閣諸島に攻撃してくるかもしれないという予測は、3月16日、元豪州連邦議会議員のアンドリュー・トムソン氏も、英語ニュース・オピニオンサイト「ジャパン・フォワード」に投稿した記事の中で示している。トムソン氏は、米大統領と米国民は、誰も住んでいない小さな島をめぐる遠く離れたアジアの2つの国の紛争に介入したがらないだろうとの見解を示している。
しかも、日本は、攻撃に対抗して、中国に深刻な損害を与えるべきなのか、それとも沖縄と九州の防衛に集中すべきなのかという問題に直面するだろうとトムソン氏は締めくくっている。今から1年前、作家で政治評論家の竹田恒泰氏は、尖閣諸島の占領は中国にとって魅力的なものである可能性がある。なぜなら、この作戦は、はるかに実行しやすく、中国の計画を実現するのを可能にするものであり、しかも米国からの介入を避けることができるからだとの定説を示した。
中国は目先の目的のために、経済崩壊のリスクは冒さない
アジア太平洋地域で大戦争が起こる可能性はきわめて低い。なぜなら、何よりも、中国自身がそのことに関心を示していないからだと述べているのは、「スプートニク」のインタビューに応じたモスクワ国際関係大学国際関係・外交学科のコンスタンチン・ヴォドピアノフ氏である。
「沖縄で計画されている訓練は、日米同盟が依然として強いものであり、どのような攻撃も阻止しうるのだという中国へのシグナルです。つまり、攻撃が行われた際に、台湾を防衛することさえありうるという警告です。しかし、アジア太平洋地域に、NATO(北大西洋条約機構)のような組織はありません。最近まで、日本に対する不信感が大きく、また国々もかなり分裂していました。ですから、現在、米国はインド太平洋地域に、同盟国である高度に発展した日本や、今のところ、できる限り中立を維持しているインドなどに頼りながら、一種の基盤を作るためにありとあらゆることをしているのです。
しかし、どちらの国においても反中国的なムードが強いです。中国を始めとする第三国からの過剰な行動を回避するため、近年、「ファイブアイズ」、AUKUS(オーカス)、クアッドなどの枠組みを維持する動きが活発化しています。米国は、このような行動によって、自分たちがアジア太平洋地域の国々を、想定される中国の攻撃から守る用意があるということを示そうとしているのです。ただしここで重要なのは、中国自身も、ロシアのように孤立することは望んでいないという点です。中国指導部は、最大限に合理的な考えを持っており、目先の目的のために、自国の経済破綻のリスクを冒すようなことはしないでしょう。中国は、米国や欧州と貿易経済関係によって強固に結びついており、国際的な生産技術連鎖にしっかりと組み込まれているため、自分の国より優位な敵国との関係を悪化させることはないでしょう」。