- Sputnik 日本, 1920, 08.07.2022
安倍晋三元首相襲撃事件
7月8日午前11時半ごろ、奈良県奈良市の近鉄大和西大寺駅近くで演説を行っていた安倍晋三元首相(67)が男に銃で撃たれ、血を流して倒れた。

安倍元首相の国葬 敬意、羨望、そして抗議

© AP Photo / Eugene Hoshiko事件後、献花台の前で祈りをささげる人
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独占記事
日本では9月27日、安倍晋三元首相の国葬が東京の日本武道館で執り行われる。国葬を行うことを決定した背景には何があるのか、なぜ日本国民が強く反対しているのかについて、専門家がスプートニクに語っている。

何が起きたのか なぜ国葬を行う必要があるのか?

7月8日、奈良市内で自民党の応援演説を行っていた安倍晋三元首相が背後から銃撃された。安倍氏はその6時間後、搬送先の病院で死亡が確認された。67歳だった。
国葬は、国に多大な利益をもたらした人物が最も高いステータスを保持していることを証明するために行う儀式である。
吉田茂元首相は、日本が第二次世界大戦後、政治家として初めて国葬で葬られた人物だ。吉田氏は、長年にわたり自由民主党の党首を務め、1951年にサンフランシスコ講和条約を締結した。
その後の2020年には、2019年に亡くなった中曽根康元首相に対し、内閣・自由民主党合同葬儀が行われた。この葬儀は、国葬と同様に、日本国家が関与する形で実施された。中曽根氏は、日本を「極東における米国の不沈空母」と表現したことで有名だ。中曽根氏は、日本は米国の最も献身的な臣下であり、米国のためなら何でもする国だと考えていた。
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国民は反対 岸田首相は賛成

27日に行われる安倍晋三元首相の葬儀は、日本の歴史上29番目の国葬となる。この国葬は、現首相の岸田文雄氏が中心となって進められた。
ロシアの経済高等学院東洋学部のアンドレイ・フェシュン助教授は、岸田首相が国葬を実施にこだわった理由について、スプートニクに次のように語った。

「こうすることで、一方ではかつての同僚への敬意を表し、他方では安倍元首相が国のために多くを尽くした非常に有用な政治家であったことを証明することができる。国民にとって国葬を行うかどうかは、道徳的な問題ではなく、物質的な問題なのだ。反対している人の多くは、この国葬にお金と労力がかかりすぎると考えている。物理的にみても、地域的にも、このようなイベントが実施されると、国民に不便が生じるだろう。しかし、安倍氏の首相としての功績を振り返る人もいる。2度にわたる安倍氏の政権時代をみると、日本にとっては非常に安定した時代であったが、その間、内政において大きな進歩はなく、外交政策ではもっとそれが起きなかった」

モスクワ国際関係大学の外交官学科長で1996年から2003年まで駐日ロシア大使を務めたアレクサンドル・パノフ氏は、安倍元首相の国葬は主に現在の日本政府に必要とされているとの考えを示している。

「安倍氏が日本において他のどの首相よりも長く政権を務めたことは注目に値する。卓越したカリスマ性のある政治家であり、具体的な目標を設定し、その達成のために努力を重ねた。安倍氏は、日本ではかなり人気があり、安倍氏の下で自民党は選挙で何度も勝利を収めた。しかし、経済で目立った成功を収めたとは言いがたく、『アベノミクス』を笑う人もいるが、安倍氏の下で経済が成長したことは事実であり、(新型コロナウイルスの)パンデミックさえなければ、経済面での成長はもっと大きかっただろう。しかし、外交政策では多くのこと成し遂げ、ほぼすべての国との関係は多かれ少なかれ安定した。全てにおいて成功したわけではないが、手を抜かず、前に進んできたのだ。 そして道は、ご存知のように、歩く人によって出来上がるのだ。 日本政府は、日本にもこのような栄誉に値する英雄がいることを世界に示したいのだ。 特に、安倍氏の死はとても悲劇的なものだった。だから日本政府は、世界政治の『上流階級』を招待したのだ」

明治大学政治経済学部の西川伸一教授は、日本国民が国葬に反対する理由はいくつかあると述べている。

「第一に法的根拠がきわめて希薄なことです。政権側は内閣法の規定を持ち出していますが、強引なこじつけでほとんど説得力がありません。法治国家の否定を意味します。

第二に安倍元首相が神格化され、批判する自由が萎縮しかねないことです。安倍政権には「功」の部分もあった(私はその立場ではありません)のかもしれませんが、それと同等あるいはそれ以上に「罪」の部分があったと考えます。しかし、それをあげつらうことは「不敬」であると指弾されかねません。

第三に安倍元首相と旧統一教会とのつながりです。宗教団体ではなくカルト団体と密接な関係をもち参院議員一人の当落まで差配するほど、旧統一教会と深いつながりをもった人物を、国費で弔うことに多くの国民は納得していません」

一方でパノフ氏は、国葬の目的をきちんと説明していれば、国民の反応は違った可能性があるとみている。

「安倍氏が首相を務めた時期には、資金の不正利用に関するスキャンダルが何度も噴出したが、そういったスキャンダルは、始まった時と同じように突然終わった。左派の人たちは、安倍首相の長所をほとんど見ず、安倍氏を『タカ派』だとしている。 第二に、おそらくこれは重要なことだが、日本政府が今回の国葬の意義を自国民に説明する時間を作らなかったことだ。 日本国内でも国葬反対の署名を集めるデモが行われているが、大規模なものではない。先日も、ある男性が抗議のために自らの体に火をつけたが、極端な形での不満の表明は即座に阻止された。もちろん、これは唯一の事例だが、こういう感情的なところが日本人の特徴で、昔はこういう場合では切腹していた」

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なぜ、岸田首相は評判が悪くなるような決断行ったのか?

フェシュン氏は、「岸田氏は、国葬は安倍元首相への礼を尽くし、追悼の意を込めたものだと考えている。岸田氏は、安倍氏が戦後日本の最も偉大な政治家の一人であると認めている。日本の多くのトップ・中堅クラスの政治家は、安倍氏をうらやんでいる。政治家は、安倍氏の人生の終え方を羨んでいるのだ。苦しむことなくほぼ一瞬で、死を呼ぶ者の手で、勇敢な死を遂げたのだ。その英雄的な死に様を羨んでいる。これはある意味、(安倍氏が)羨望の的となっており、その意味でも安倍氏を称えないのはなぜなのか、ということになる」と述べている。
西川教授は、「岸田首相にとって政権運営を安定させるためには旧安倍派の支持が欠かせません。加えて、安倍元首相の銃撃後、元首相に弔意を示すために人々の長い行列ができました。旧安倍派およびその背後にいる保守勢力の歓心を買い、さらには国民も支持するはずと考えて国葬を行うことがひらめいたのだと思います。前者の目的はある程度達成されたかもしれませんが、後者の目的はまったく達成されませんでした。世論を読み誤ったというほかありません」と指摘している。
編集:リュドミラ・サーキャン、マリア・チチワリナ、エレオノワ・シュミロワ
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