欧州ではエネルギー危機が迫る中、薪の盗難事件が発生 日本も同じ状況に? 日本政府 節電を呼びかけ

© AFP 2023 / Jiji Press日本、冬
日本、冬 - Sputnik 日本, 1920, 03.11.2022
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日本政府は1日、今冬に国民と企業に対して節電を呼びかけた。日本では冬の節電要請は7年ぶりとなる。日本国民は、今回の要請に対してどのような反応を示したのだろうか?ヨーロッパでは数ヶ月前から節電要請がなされ、住民が発電機やストーブを買い占めている他、薪の盗難事件も起きている。この冬、日本人はヨーロッパ人に倣って、暖を取るための応急措置に頼らなければならないのだろうか?スプートニクの記事をお読みください。
節電要請の期間は12月1日から3月31日までで、強制的な意味合いのものではない。この要請に関して西村康稔経産相は、国内の電力供給状況は厳しいとの考えを示している。また、西村氏は、日本は安定したエネルギー供給を必要としていることから、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」に引き続き参加し、権益を維持するように努めると明らかにした。
「サハリン1」プロジェクトに参加する日本企業「伊藤忠商事」の岡藤正広社長は、日本はロシア産原油と天然ガスを輸入しなければ生き残ることはできないと発言した。
また、昨今のエネルギー危機を受けて、日本の岸田文雄首相はここぞとばかりに原発回帰の方針を示している。原発事故後に再稼働した10基の原子炉に加え、さらに7基を再稼働すること、次世代原子炉の建設や運転期間の40年から60年への延長などをすでに表明している。
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ヨーロッパではどのような対策がとられているのか?

欧州の人々は冬の到来を恐れ、ストーブや薪、発電機を購入して自力で寒さに備えようとしている。日本のように、原子力発電の利用することで事態の緩和を図ろうとする政府も一部ある。ドイツでは現在稼働中の原発は3基のみだが、同国のショルツ首相は、エネルギー危機を理由に、2022年末までに廃止予定だったこの3基の原発の稼働を継続するように命じた。
一方、北欧の寒冷な国フィンランドでは今冬、エネルギー不足による停電が計画されているため、人々は「寒さで死ぬ」恐れがあるという。ロシアのエネルギーがフィンランド全体のエネルギー供給に占める割合はわずかだが、それがなくなるとなると人々の生活に大きな影響を及ぼす。フィンランドでは冬場、マイナス20度まで気温が下がる。
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エネルギー市場の分析を行うイタリア企業「ノミスマ・エネルジア」のダビデ・タバレッリ社長は、エネルギー価格の値上げにより欧州は未曾有のエネルギーショックに直面しており、人々に発電機を購入するよう呼びかけている。同氏は、天然ガス料金が1立方メートルあたり0.7ユーロ(約102円)から2.3ユーロ(約335円)に跳ね上がったことはヨーロッパ全体を震撼させ、欧州は今、エネルギーの節約に向けて準備を進めるべきだと指摘している。
ヨーロッパの一部の地域では、冬の到来とエネルギー危機により暖房に薪を使うようになったものの、薪が人気の天然資源となったことで盗難事件が確認されている。
チェコ当局は、闇取引などの悪用を避けるため、個人が購入できる薪の量を制限することを決定した。ポーランドは、冬場の暖房として国民がゴミを燃やすことを検討しており、当局はスモッグ対策マスクを配布することについて議論を進めている。
ドイツでは、旧西ベルリンの住民が暖房の季節に備え、石炭や薪を燃やす暖炉の手入れを行っている。ドイツの電気料金は8月に25%上昇し、1メガワットあたり700ユーロ(約10万2000円)の大台に初めて乗った。この価格は、過去5年間における平均価格の約14倍にあたる。
欧州連合(EU)だけでなく、英国でも薪の価格が上昇している。英国内大手サプライヤー「サーティンリィ・ウッド」は、薪の価格が2021年よりも15~20%上昇していると明らかにした。
西半球のエネルギー事情も深刻化している。米エネルギー省は、自国民に対しエネルギー価格の上昇に備えるべきだと忠告している。発表されたデータによると、米国ではディーゼル燃料の在庫は25日分しかない。また、燃料需要も 2007 年以来の高水準となっている。
欧州がエネルギー危機を引き起こした=オーストリアのクナイスル元外相 - Sputnik 日本, 1920, 11.09.2022
欧州がエネルギー危機を引き起こした=オーストリアのクナイスル元外相

日本のネットユーザーの反応

日本のネットユーザーは、政府が節電を決定し、これから厳しい冬がやってくるという報道を受けて、不安やいらだちをSNSに書き込んでいる。
あるツイッターユーザーは、家庭の節電はもうこれ以上できないと投稿している。
その一方で、電力供給の仕組みを変えるよう求め、電力確保の具体的な方法を提案する建設的な批判を投稿するユーザーもいる。
合同会社エネルギー経済社会研究所代表の松尾豪氏は、節電・節ガスについて欧州諸国と日本の状況を以下のように比較している。
「欧州でも節電・節ガスの政策と、物価対策の補助金拠出の政策がマッチしておらず、『アクセルとブレーキを同時に踏むようなもの』との指摘が出ています。日本でも同じ指摘ができますが、電力各社の決算は大変悪化しており、需要家への価格転嫁は待ったなしの状況となりつつあります。政府は非常に難しい舵取りが求められています。 また、一部火力発電所(相馬共同火力新地1号)の運転再開見通しが立たなくなりました。仮に運転再開が遅れた場合には、東日本では想定よりも厳しい需給バランス(寒波襲来時に大型火力1-2基が停止すると停電)となる可能性が出ております」
日本エネルギー研究所の専務理事・首席研究員の小山堅氏は、この冬の電力需要増は、天候に左右される可能性があると指摘している。したがって、悪天候が続くと電力不足が深刻化し、日本のエネルギーバランスの中で重要な位置を占めている太陽光発電が困難になる恐れがある。
「ようやく、設備容量の確保などに最大限の努力を積み重ねた結果、予備率が需給逼迫の深刻さを示す『節目』となる3%を確保する状況となった。とはいえ、現時点で油断するわけにはいかない。冬場の気温次第で一気に電力需要が急増することは大いにありうる。また、天候悪化の状況では、今や電源構成で無視できないほどの重要性を持つに至った太陽光が不調に陥る可能性もある。そして、過去数年の中で、想定外の電源脱落も起きてきた。こうしたことが重なれば、一息着くに至った『3%』の予備率が大きく低下し、まさに綱渡り状況に陥るシナリオが考えられる。だからこそ、今回は改めて全国対象で節電要請が出されることになった。日本経済と暮らしにとって、電力安定供給はまさに要(かなめ)である」
また、あるネットユーザーは、電力の確保にもっと力を注いでほしいと訴えている。

「政府はもっと電力確保の努力をしてほしい。この夏にやはり電力不足で同じようなことを言っていたじゃないか。その時から冬場も同様に電力不足が予見されていたのに、その間、何の努力もしていない。その場その場の行き当たりばったりで『物が足りなくなったので節約してください』みたいなやり方は子供のすることだ。火力発電で足りなければ政治的配慮で休止している原発を稼働させれば済むことだろう。これが政府のやるべき努力だ。自分のやるべき努力をせずに、そのツケを国民に押し付けないでほしいな」

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