【解説】歩み寄りに向け一歩踏み出す日本と韓国

© AP Photo / Vincent Thian日本の岸田文雄総理大臣と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領
日本の岸田文雄総理大臣と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領 - Sputnik 日本, 1920, 17.11.2022
アジアにおける米国の重要な2つの同盟国である韓国と日本が、両国の歴史における長年にわたる一連の問題によって暗い影を落としていた2カ国関係の正常化に向け、足を踏み出した。
日本の岸田文雄総理大臣と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、第二次世界大戦中、日本の統治下にあった朝鮮半島で強制的に労働させられた問題について、早期解決に向けた作業を活発化していくことで合意した。
この合意は、11月13日にカンボジアのプノンペンで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会談の際に行われた日韓首脳会談で達成された。

米国は常に2つの同盟国の関係正常化を促進しようとしてきた

両国が納得できるような解決策は、両国間の経済関係を回復させ、緊張が続くこの地域における米国の同盟国同士の長年の不満を解消するチャンスを与えるものである。この対話に先立ち、同日、日韓首脳と米国のジョー・バイデン大統領との日米韓首脳会談が行われた。
その中で、バイデン大統領は、日本と韓国は、北朝鮮のミサイル発射や核開発の脅威との闘いにおいて同じように懸念し、協力することが求められる、米国にとっての重要な同盟国であると指摘した上で、北朝鮮からは煽動的な行動が続いているとして、連携の重要性を強調した。
米国は、欧州でもアジアでも、自国の同盟国間の関係正常化を促進しようとしてきた。
しかし、NATO(北大西洋条約機構)と異なり、日本と韓国は米国との合意によって結びついているのであり、個別の同盟関係はない。そこで米国にとっては、両国の間に二国間関係を弱体化するような深刻な紛争を起こさないことがきわめて重要である。また日本と韓国の経済にとっても、歴史問題によって関係を激化させることは、きわめて厄介なことである。

首脳会談の前に行われた事前準備

岸田総理と尹大統領の首脳会談の基盤づくりは、事前に行われた。両首脳による初めての会談は、9月21日、国連総会に出席するために訪れたニューヨークで実施された。しかし、このときの会談は非公式な懇談とされ、報道陣は入ることができなかった。
手描きの日韓両国の国旗 - Sputnik 日本, 1920, 12.05.2022
日韓関係、雪解けなるか?
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)新大統領の就任式に出席し、大統領と会談を実施した日本の林芳正外務大臣は、尹大統領が2か国関係の改善に向けて努力していく用意があると表明したことを明らかにした。両国関係は長きにわたり、戦時中のさまざまな問題をめぐる意見の相違により、緊張したものであり続けてきた。
10月6日、両首脳は、電話会談を行った中で、両国関係の早期正常化は、両国の経済にとって有益なものであるとの考えで一致した。9月末に日本の議員団が3年ぶりにソウルを訪れ、11月2日には、元総理大臣の「政治界の重鎮」である麻生太郎氏が韓国を訪問した。麻生氏は日韓協力委員会の会長を務めており、韓国側の同委員会からの招待を受けた。麻生氏は、強制労働に従事させられた韓国人に対する損害賠償問題について話し合うため、尹大統領と会談した。
そして麻生氏は、日本側は「2カ国関係の早期修復に向けた努力を行っていく」と明言した。

関係悪化のきっかけ

思い出していただきたいのは、従軍慰安婦や、日本統治時代に日本企業で働いた元徴用工への賠償金支払いの問題をめぐっては、総じて、過去のあらゆる問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場が維持されてきたということである。
それでも、日本政府は数回にわたって謝罪し、犠牲者に対する追加の賠償金支払いを提示してきた。しかしながら、こうした行動にも関わらず、韓国はさまざまな理由で、日本の対応に満足の意を表してこなかった。
従軍慰安婦」に対する損害賠償について言えば、この問題は日本の立場では、2015年、安倍晋三元総理と朴槿恵元大統領の間で結ばれた合意で解決したと考えられている。
靖国神社 - Sputnik 日本, 1920, 17.08.2022
靖国神社に祀られている戦没者を追悼するという義務を果たしつつ、近隣諸国の反発を避けようとする日本の政治家たち
日本の終戦から77年となる8月15日、日本武道館(東京都千代田区)で、全国戦没者追悼式が、日本のあらゆる伝統に従い執り行われた。参列した天皇陛下はお言葉の中で、「過去を鑑み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されないよう切に願い」、平和を希求し続けていくことを願うと述べられた。天皇陛下に続いて式辞を述べた岸田文雄総理大臣は、謝罪の言葉は述べなかったが、戦争を否定し、平和主義の旗の下、国際社会と力を合わせながら、さまざまな問題の解決に全力で取り組んでいくと述べた。
両国関係が危機的状況となったのは、2018年に韓国最高裁が、新日鉄重金と三菱重工業に対し、韓国側の原告に対し、損害賠償の支払いを命じたことがきっかけである。
日本政府はこの決定に抗議したが、裁判所は日本企業の韓国内の資産を差し押さえ、売却して支払いを行うよう求めた。
これに対し、日本は韓国経済に対する制裁を発動した。
これが原因となり、2019年、日本と韓国はハイテク分野における貿易戦争の淵に臨むこととなった。

経済協力復活の動機はチップ問題か

中国・近代アジア研究所の主任研究員、エヴゲーニー・キム氏は、「スプートニク」からのインタビューに答えた中で、日本と韓国が歩み寄りを見せているのは、経済的な理由によるものである可能性があると指摘する。

「日本は世界3位の経済大国、一方の韓国は10位です。そして、両国の貿易高はおよそ1000億ドルです。そこで、経済協力の復活は、正常なことであり、韓国の野党も反論することはないでしょう。

ただし、韓国の経済にとって、一つだけ、センシティブな問題があります。日本が、チップ製造のための主要な素材の輸出を規制したことで、韓国の一連の製造が停止し、韓国のチップメーカーは、代替品の模索において袋小路に陥りました。この素材とは高純度フッ化水素です。

これはロシアや中国でも購入することができますが、日本の素材は純度に優れています。この高純度フッ化水素というものは、サムスンやSKハイニックスが世界市場の半分以上を占めているスマートフォンから自動車にいたる多くの機器や機械に使われているメモリーチップの製造にきわめて重要なものです。日本はそれを作ることができますが、韓国ではできません。

現在、米国はチップの製造を自国領内に移すという目標を据えており、韓国はすでに米国に工場を建設しています。もし米国がこの計画を実現することができれば、2030年には米国はチップ製造の独占市場になるでしょう」。

北朝鮮、在日朝鮮人が嫌がらせを受けたら断固たる行動をとると日本政府に警告 - Sputnik 日本, 1920, 16.11.2022
北朝鮮、在日朝鮮人が嫌がらせを受けたら断固たる行動をとると日本政府に警告
北朝鮮は16日、北朝鮮の政策を支持する在日朝鮮人に対する嫌がらせを続ければ、日本が「重い代償を払うことになるだろう」と警告した。韓国の聯合ニュースが報じた。16.11.2022

日本にとって、懺悔するのは損害賠償よりも難しい

韓国人に対する賠償金支払いの問題解決は、けしてお金だけの問題ではない。日本は韓国の強制労働者に対する損害賠償の支払いを拒否したわけではなく、全員ではないにしても、多くの人々に1万6000〜3万4000ドルが支払われた。しかし、この一件について、日本は1938年に施行された「国民徴用令」に従って、朝鮮労働者を動員したとして、自らの罪を認めていない。
つまり、これは日本人も同様に対象となった法に基づいたものであったことから、朝鮮の強制労働は、「合法」であるというのが日本の主張なのである。
エヴゲーニー・キム氏はさらに次のように述べている。
「もっとも大事なことは、日本側は謝罪をしていはいますが、それが日本政府の罪だったと認めることを拒否しました。ですから、韓国人はこれが日本人の心からの懺悔であり、このようなことが2度と繰り返されないと信じることができずにいます。韓国は、1910年まで、清の冊封体制の下にあったものの、主権を有していました。日本は韓国を植民地化し、国家の民族性を剥奪するためにあらゆることをしました。自分の言語を忘れ、改名するよう強制し、つまり植民地時代、韓国人は民族的、文化的特徴によって差別を受けたのです。これは彼らにとって、大きな侮蔑です。そしてこのことは、韓国で世代から世代へと伝えられているのです・・・」。
ロシアと韓国の旗 - Sputnik 日本, 1920, 12.11.2022
「米国はモスクワとソウルの関係悪化のため、韓国にウクライナ支援を要請」=専門家
米国は韓国によるウクライナへの致死性兵器の供給を、ウクライナ軍のためではなく、韓国とロシアの関係を悪化させるために求めている。こうした見方をソウルの韓国外国語大学ロシア研究学部長のチェ・ソンフン氏が示している。チェ氏はこうした動きについて、アジア太平洋地域における親米諸国の大同盟に韓国を縛り付け、中国、ロシアに対する抑止力を高めようとするものだとしている。12.11.2022

韓国は日本とは軍事同盟を結ばない

数年前、歴史問題、領土問題を背景に、日本と韓国は、米国との合同軍事演習を停止した。
2019年、韓国は日韓秘密軍事情報保護協定の破棄を決定したが、米国による継続要請を受諾する形で、なんとか協定失効通告の停止を決定した。
しかし、エヴゲーニー・キム氏によれば、軍事分野での協力は米国の同盟国の義務となっていることから、今も継続されているという。

「この例となっているのが、今年9月と10月に日本海上で行われた米国、日本、韓国による合同軍事演習です。11月には北朝鮮が新たに弾頭ミサイルの発射を行ったことにより、米国と韓国は『ビジラント・ストーム』と銘打った別の演習を行いました。公式的には、この演習は、北朝鮮に対抗するためのものとされています。

しかし、台湾をめぐる情勢が激化した場合、韓国も日本もこの紛争に巻き込まれる可能性があります。それは米国の軍事基地が国内にあるという理由だけによっても、です。ですから、この演習の一部は、有事に向けた3カ国の軍の連携訓練なのです。米国にとって、3カ国関係の強化は、大きな意味で、北朝鮮というよりも、中国に対抗するものです。そして日本も韓国もこのことを理解しています。

ただし、韓国には、日本と個別に軍事同盟を結ぶ考えはありません。韓国にとって、海上自衛隊の艦船の上に掲げられた日本の旗は、日本の軍国主義のシンボルであり、過去を思い起こさせるものなのです・・・」。

さらに付け加えるなら、独島(竹島)をめぐる領土問題、また文在寅大統領時代、「日本海」という名称は日本の植民地政策を思い起こさせるとして持ち上がった日本海を東海に改称するという問題なども、近年、日韓関係が悪化したきっかけとなっている。しかし、尹大統領は、就任直後から、日韓関係を改善するという路線を打ち出していた。
日本もすぐにではなかったが、韓国との緊張関係を緩和する用意があるとの認識を示した。
とはいえ、両国間のあらゆる政治問題の長期的解決は簡単なものではないだろう。
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