モンゴル暴動、「多方面外交」が背景と専門家 中国・日米の狭間で揺れ動く草原の国

© 写真 : Eyewitness大統領宮殿前のデモ隊
大統領宮殿前のデモ隊 - Sputnik 日本, 1920, 07.12.2022
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モンゴルで石炭の輸出をめぐる汚職疑惑を端に起こった大規模暴動について、専門家は日本や米国との関係を強めようとするモンゴルの「多方面外交」が背景の一つとなったと指摘している。
デモの発端となったのは中国への石炭輸出をめぐり650万トン、18億ドル(2450億円)相当の石炭が「盗まれた」汚職事件とされている。中国はモンゴル当局の要請を受け、捜査に協力している。モンゴルの複数の政治家も関与しているとの情報もあり、汚職で腐敗した政権への国民の不満が爆発した形となった。
4日に始まった暴動では、首都ウランバートルで暴徒化したデモ隊が一時大統領宮殿になだれ込む事態にまで発展し、非常事態宣言の発令まで検討された。6日はデモの規模は縮小し、落ち着きを取り戻しつつあるというが、未だ予断を許さない状況だ。
ロシア科学アカデミー・東洋研究所のアレクサンドル・ボロンツォフ氏は、次のように語る。

「暴動のトリガーとなったのは中国側がデータを提供したことだ。中国は事件の捜査を独自に行っているが、中国側マフィアの犯人はすでに処罰され、モンゴル側の犯人のデータもすでに(編注:モンゴルに)送っている。ここで、モンゴル国民は自国政府が何か隠しているのではないかと疑念を抱いたのだ」

モンゴル、ウランバートル - Sputnik 日本, 1920, 06.12.2022
2450億円相当の石炭窃盗事件? モンゴル、汚職に国民の不満爆発 デモ隊が大統領宮殿を占拠
また、ボロンツォフ氏は今回の暴動の背景にはモンゴルが中国と日米韓の間でバランスを取ろうとする多方面外交があると指摘する。

「モンゴルは多方面外交を展開しようとしている。このためには米国、日本、韓国といったモンゴルに投資をしたり貿易相手となってくれる、いわゆる『第三の隣人』が必要になる。

 多方面外交の一環として、このごろモンゴル高官の使節団が北京を訪問して中国との友好をデモンストレーションした。その後には日本を訪れ、米国を中心とする中国包囲網に事実上の団結を示した。中国が汚職事件に関するデータを持ち出したのはこの直後だった」

「このことはモンゴルと中国が汚職でさえ密接につながっていることを示すシグナルだ」とボロンツォフ氏は続ける。そして、モンゴルは「国際情勢も見極めつつ次の一手を決めなければならない」と締めくくった。
確かに中国としては捜査に協力することは友好関係のアピールにはつながるし、事件を利用してモンゴルを自らの影響下に留めようとしているという穿った見方もできるだろう。一方、モンゴルとしては多方面外交で諸外国との友好関係を築こうと舵を切るなか、思わぬ内政の混乱で出鼻をくじかれた形となった。
モンゴルは中国への輸出が全体の86パーセントを占め、そのうち半分は石炭となっている。地理的、歴史的にも中国との関係は深く、経済的にも依存している。
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