【視点】アジア太平洋地域におけるエスカレーションの悪循環には拍車がかかる

© 写真 : US Navy / Bradley J. Gee米軍艦
米軍艦 - Sputnik 日本, 1920, 11.12.2022
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米国のオースティン国防長官とオーストラリアのマールズ国防相は、インド太平洋地域の平和と安定に脅威を与える台湾周辺を含む同地域での中国の行動に対抗するため、米豪の軍事技術協力を強化する意向を確認した。双方はまた、日本を交えた3ヵ国による防衛協力を拡大することでも一致した。東京で9日に開催予定の日豪外務防衛担当閣僚会議(2プラス2)でもこれがテーマとなった。
ワシントンで5日に開かれた協議には、米国のブリンケン国務長官とオーストラリアのウォン外相も出席した。協議の最後には、防衛分野における協力を深化させることで合意がなされた。オースティン氏は協議後の共同記者会見で「オーストラリアにおける米軍のローテーション(巡回)配備を拡大する。これには爆撃機と戦闘機のタスクフォースのローテーションや、米海軍と米陸軍の部隊や装備の今後のローテーションが含まれる。また補給活動についての協力も拡大する。これは相互運用性を深め、柔軟性や抗たん性を向上させる」と述べた。同氏は、両国が日本との防衛協力を強化することでも合意したことを明らかにした。
7日にも重要な会合が開かれた。マールズ氏とオースティン氏は米国防総省で英国のウォレス国防相と協議した。これは米豪英3カ国の安全保障の枠組み「オーカス(AUKUS)」 の第1回国防相会合として位置付けられた。オースティン氏は、2021年9月の「AUKUS」発足以降、オーストラリアによる通常兵器を装備した原子力潜水艦の取得に進展がみられたと指摘し、米国はオーストラリアができる限り短期間で不拡散における最高度の基準に従ってこの能力を獲得することに関心を持っていると述べた。これに対してマールズ氏は、先に原子力潜水艦を建造する米ロードアイランド州にあるエレクトリック・ボート造船所を視察したことを明らかにした。同氏は、オーストラリアが過去に同国南部アデレードでコリンズ級潜水艦を建造していたことに言及し、「この能力をオーストラリアで構築することは、英国、米国、オーストラリアのコンビネーション効果にとって非常に重要となるだろう…」と述べた
2009年、コリンズ級潜水艦で故障が頻発したことを受け、修理・近代化計画が策定された。2016年にはコリンズ級潜水艦の後継艦としてフランスの造船会社ナバル・グループの通常動力型潜水艦が選ばれた。しかし、米英豪が「AUKUS」の発足を発表した2021年9月、米国がオーストラリアに原子力潜水艦の技術を提供することを約束し、フランスとの潜水艦計画は破棄された。
米共和党、「中国の脅威に対抗するための」特別委員会を設置=共和党院内総務 - Sputnik 日本, 1920, 09.12.2022
米共和党、「中国の脅威に対抗するための」特別委員会を設置=共和党院内総務
中国・現代アジア研究所の主任研究員、ウラジミール・ペトロフスキー氏は「これはアジア太平洋地域で自国の軍事力と影響力を強化するための米国の一貫した政策だ」と述べ、次のように語っている。

「この種の協議は、米国がアジアで 北大西洋条約機構(NATO)のような構造を構築するためのさらなる1歩だ。米国は中国及び間接的にロシアを封じ込めるための広範な連合をつくるために、このようなたぐいの枠組み(クアッド=QUADやAUKUSも含まれる)を同盟国に奨励し、仕向けている。なぜならオーストラリアが取得している原子力潜水艦は、それを巡って米国とロシアの間にずいぶん前から法的紛争が存在している北極海航路を脅かすおそれがあるからだ。なお、米国は国連海洋法条約を引用して、特に南シナ海における航行の自由の意義を力説している。しかし、米国自体はこの条約を批准していない。また米国は、いま現在も中国の主要な貿易相手国だ。米中貿易額は増加しており、貿易収支は中国に有利だ…」

東京で開催された日豪「2プラス2」には、日本側から林芳正外相、浜田靖一防衛相、豪州側からペニー・ウォン外相、リチャード・マールズ防衛相が出席。10月の首脳会談で署名した安全保障共同宣言をふまえて自衛隊、豪軍の共同訓練の拡大や中国が進出を狙う太平洋の島国への支援でも一致し、関係を強化する方針を示した。
日本の岸田首相とオーストラリアのモリソン前首相が今年1月、自衛隊とオーストラリア軍が互いの国に部隊を派遣して共同活動を行う際の法的地位や手続などを定める協定「日豪円滑化協定」に署名した。そして10月には、岸田首相とオーストラリアのアルバニージー首相が今後10年間の安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名した。この共同宣言には共同訓練の実施や施設の相互利用などが盛り込まれている。
経済高等学院世界経済国際政治学部のオレグ・パラモノフ助教授は「これは米国にとって所謂『クモの巣』の最も重要な要素の1つだ。これはNATOを彷彿させる半同盟システムだが、より柔軟で、現実により適応している」との見方を示している。

「エスカレーションの悪循環に拍車がかかるのは明らかであり、これには一定のリスクが伴うだろう。これまでに日本とオーストラリアが相互のアクセスや情報交換について合意していたことを考慮すると、日本にとってのリスクは、日本が古典的な軍事大国に変わることにある。痕跡として残っている『平和主義国』の国という日本の認識は、目の前で消え去りつつある。

 オーストラリアにとってのリスクは、同国が『非核国』のイメージを維持し、すべての非核イニシアチブの当事国であり、これが東南アジア諸国連合(ASEAN)から非常に高く評価されていたことにある。しかし、原子力潜水艦は核兵器の不拡散に不釣り合いであり、地域の安全保障における責任ある一貫したパートナーのイメージを下げている。

 もちろん、(原子力潜水艦の)エンジンは核兵器ではないが、平和的な原子力でもない。ちなみに、オーストラリアは日本と同じように米国の『核の傘』に頼っていたが、日米条約とは異なり、これがオーストラリアに関しては十分明確には記されなかった。そしてオーストラリアも、このテーマを特に強調しなかった。

 地域全体にとってのリスクは、そのような半同盟が、そこで安全保障の問題が議論されていたインド太平洋地域のASEANを中心としたアーキテクチャのフィールドを侵食し、骨抜きにすることにある。そしてこれはロシア、中国、インドネシア、マレーシアなどの深刻な懸念を呼んでいる。多くの問題で特別な立場にあるインドについては言うまでもない...」

ブリンケン米国務長官 - Sputnik 日本, 1920, 06.12.2022
中国とは緊迫したライバル関係にあるが、衝突は望んでいない=米国務長官
米国防総省の国防情報局(DIA)は11月29日、中国の活動を追跡するための分析・鑑定チームの設立を発表した。同チームは2023年初頭から本格的な作業を開始する。この国防総省の諜報機関であるDIAのチームの作業により、中国に関するデータやそのノウハウを含むアーカイブを入手できるようになる。そしてそれによって、DIAや米国防総省のその他の職員たちは、中国に関する「深いレベルの鑑定」についてチームの専門家たちに問い合わせることができるようになるという。
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