- Sputnik 日本, 1920, 22.12.2022
2022年の主要な出来事
2022年の日本と世界の政治、経済を揺るがし、社会生活に最大の影響を及ぼした主な出来事と、目前に迫る2023年を予測したスプートニクの記事を一挙にご紹介します。

【解説】2022年を振り返る 軍事情勢

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露軍人 - Sputnik 日本, 1920, 29.12.2022
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日本では、2022年の世相を一文字で表す「今年の漢字」に「戦」が選ばれた。事実、今年の軍事分野での大きな事件となったのは、ウクライナにおける特別軍事作戦である。また、アジア太平洋地域情勢も、台湾をめぐる軍事紛争の開始に対する深刻な脅威が生まれるほど、急激に悪化した。2022年、軍事政治的情勢はきわめて緊張したものであった。この緊張はおそらく2023年も続くことになるだろう。

ウクライナにおける特別作戦

ウクライナにおけるロシア特別作戦は、兵器をはじめ、政治的アプローチ、メディアなど、事実上、すべての戦闘手段が用いられたという点で非常に興味深い。ロシアの安全保障に深刻な脅威をもたらすようなウクライナ政府の攻撃的な対露政策そのものも理性を欠くものであった。ウクライナは作戦開始当初、ウクライナの5倍の規模の軍を持ち、兵器においても、経済力においても優勢な敵に勝つことはできなかった。
そこでウクライナはNATO(北大西洋条約機構)からの軍事的、政治的支援に期待した。その結果どうなったのか。
まず、ロシアにおけるウクライナと欧米諸国によるプロパガンダ活動は、すでに2022年2月から3月の時点で失敗に終わった。ロシア国民の大部分は、特別作戦を支持し、しかも、多くの市民が個人的に軍に参加したり、支援を行ったりした。
ロシアのプーチン大統領 - Sputnik 日本, 1920, 29.10.2022
【視点】プーチン大統領は、世界における西側支配の時代は過ぎ去りつつあると述べた。西側はどのような反応を示す可能性があるか?
次に、2022年にウクライナに送られたNATOの兵器と軍事技術は、それまでに言われていたほどの優位性がまったくないことが判明した。
今年もっとも失望させられたものといえば、トルコの無人戦闘機バイラクタル、そして米国の高機動ロケット砲システム、ハイマースM142である。ウクライナのバイラクタルは、特別作戦開始直後に、ロシアの防空システムによって殲滅された。一方、ハイマースは軍の後方、橋、またドネツクの住宅街への攻撃に積極的に使用された。しかし、ハイマースは防空システム・ミサイル防衛システムに対しては弱いことが分かり、ロシア軍はたちまち、対抗するための戦法を編み出した。さらに失望させられるものとなったのは、対戦車ミサイル、ジャベリンFGM-148である。ウクライナ軍司令部はこれで簡単にロシアの戦車を殲滅できると考えていた。しかし実際には、その効果性はそれまでに宣伝されていたよりもはるかに低いものであった。ジャベリンから2〜3発の攻撃を受けた戦車が、その後も戦闘を続けたということもあった。多くのミサイルがウクライナ軍兵士によって発射され、失敗に終わった。そして年末には、ウクライナ軍にこのミサイルは残らないものと見られる。
概して、ウクライナに対するNATOの武器供与はロシアの軍事産業を大いに助けるものとなった。戦利品として、ほぼすべての最新型の武器を正常な状態で手にしたロシアは、これを研究材料とすることができたからである。
(米国が主要戦車であるM1A1エイブラムスをウクライナに供与しなかったのは残念である。ロシアの戦車製造メーカーの間では、ロシアのТ-90と衝突した際に、突破できるかどうかという議論が湧き上がっている)
第3に、ロシアに対する制裁を発動した西側のウクライナの同盟国は、ロシアを世界の他の国々から引き離し、ロシア経済を破綻させることができると考えていた。
しかし実際には、ロシアを排除することはできなかった。
ロシアの輸出は2022年の1月から9月にかけて、2021年に比べて25%増加し、貿易黒字は93%の伸びを見せた。ロシアは、ドル決済から元決済に移行して中国との貿易を活発化し、またインドやその他の国々とも精力的な貿易をおこなっている。制裁が発動されているにもかかわらず、欧州諸国はロシアから液化天然ガスを購入している。
第4に、ロシアは戦争に備えのあるウクライナ軍と戦うことを余儀なくされた。2022年12月7日にドイツのアンゲラ・メルケル前首相は、欧州諸国がウクライナをロシアとの戦争に備えて訓練していたことを認める発言をおこなっている。
一方のロシア軍はこれまでにパルチザンに対抗するための作戦の経験しか有していない。正規軍との戦いは1945年9月、満州で関東軍での戦闘以来経験していないのである。
しかし、ロシア軍は再び攻撃に転じ、ウクライナの非軍事化と非ナチ化という特別作戦の課題を遂行し続けている。

台湾危機

2022年夏、太平洋地域の緊張は軍事行動開始が懸念されるギリギリの状態にまで達した。8月3日に米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問。ペロシ議長のハワイ訪問、そしてその後の台北訪問はオンラインで追跡された。
飛行機の動きをフライトレーダーのユーザー300万人以上が追跡したというのは、歴史的な記録である。
中国はこの訪問に強く反対していた。というのも中国は、これを「祖国統一」の原則を破るものであり、また台湾を中国から引き離そうとする試みだと考えているからである。ペロシ議長の台湾訪問を前に、中国人民解放軍は大規模な軍事演習を繰り返し実施し、インターネット上には、台湾海峡に配備された兵器が映し出された。またメディアには、ペロシ議長をのせた飛行機が台北に着陸した場合、軍事行動を開始する用意があるとの断固たる声明も現れた。
しかし、実際には何も起こらなかった。ペロシ議長は台北入りし、台湾の蔡英文総統と会見した。これに対し、中国は、演習を実施し、ミサイルを発射するにとどまった。そして第4台湾危機とも噂された危機的状況は平和のうちに打開された。
しかし、この状況に大きく影響するファクターがある。
第一に、2021年の台湾のGDP(国内総生産)は7895億ドル、つまり中国のGDPの4.6%であったこと。中国は当然、台湾を力で制圧することができる。しかし実際にそのようなことが起こることはないだろう。台湾経済、それは高価な陶器の花瓶のようなものであり、割らずにそのまま手に入れる必要があるからだ。
第二に、台湾経済と中国経済は少しずつ統合されつつある。2021年、台湾の輸出の42%が中国と香港向けであり、輸入の22%は中国と香港からであった2021年、米国は台湾の輸出の15%、輸入の10%を占めていた。
第3に、中国軍はペロシ議長の訪問に軍事演習をもって対抗したが、この軍事演習で、中国人民解放軍の海軍が台湾を全方面から包囲できることを証明した。
中国軍の空軍は、台湾空軍を6.5倍上回っている。台湾に何か期待できることがあるとすれば、それは米国の支援だけである。もし米国が地域から撤退すれば、台湾が中国のものになることは避けられない。米国を太平洋地域西部から強制排除すれば、それは中国と米国および日本を含むその同盟国との大規模な軍事衝突が起こることを意味する。中国軍司令部はこのことを100%想定している。
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北朝鮮のミサイル発射

2022年、北朝鮮ミサイル軍は、かなり頻繁にミサイル発射を行った。行われたミサイル発射の回数は合わせて33回、その中で10種類のミサイル78発が発射された。このミサイル発射は日本の大きな懸念を呼んだ。
発射の一部は実験であった。たとえば、2022年11月18日には、大陸間弾道ミサイル「火星17」の発射実験を行った。この「火星17」は射程15000キロで、小型化した複数の核弾頭を搭載することができるものである。その射程は、米国全土と欧州を余裕をもってカバーできるものだ。また2022年11月2日行われたミサイルの大量発射(23発)はまた別の種類のものであった。これらの発射では、短距離弾道ミサイル、地対空ミサイル、また大砲が使われた。
発射の性格から判断して、これらは敵の艦隊あるいは空軍による北朝鮮領内への攻撃に対抗するための複合的演習だったと思われる。演習では、ミサイル軍の統制、情報収集、目標設定、人員教育訓練などが確認された。また空からの攻撃に対し、ソ連製のS200に似た対空ミサイルシステムによる反撃の訓練も行われた。
北朝鮮は自国の防空システムの改良を断固として進めている。防空システムS200は最大射程300キロ、最大射高40キロで、90キロの炸薬弾頭をもつ。命中すれば、航空機を粉砕することができるものであるが、北朝鮮はおそらくこのシステムを改良したとみられる。
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【視点】北朝鮮はなぜ韓国に無人機を飛ばしたか 撃墜はなぜできなかったのか 韓国人専門家
これらのミサイル発射の結果として、北朝鮮は、自国のミサイル開発問題の外交的解決のために前提条件なしで協議を行うという米国の提案を拒否した。
それは概して驚くべきことではない。ミサイルは言葉よりも明確にそれを物語っている。
最後に強調したいことは、2022年の出来事は共通した原因によって引き起こされたものだということである。それは、信頼上の危機、そして米国およびEU諸国の声明や約束への不信である。
米国とその同盟国によるあからさまな合意の違反があまりに増加し、紛争の解決というものが、交渉のテーブル上ではなく、究極の武力をもって行われるようになったのである。しかも、アンゲラ・メルケル前独首相が、ドイツは、ウクライナがロシアとの戦争によりよく備えることができるようにするためにドンバスに関するミンスク合意を推し進めたとの声明を表した後、合意というものにはあまり意味がないということが明らかになった。
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