【解説】相次ぐ10代の若者の乱闘騒ぎ 「旅団」名乗る漫画H×Hファンとサッカーファンはなぜ争ったのか

© 写真 : Social Media「民間軍事会社リョダン」グループ
「民間軍事会社リョダン」グループ - Sputnik 日本, 1920, 02.03.2023
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ロシアではここ数日、集団による乱闘騒ぎに参加したとして、10代の若者約450人が拘束された。若者らは皆、アニメファンのサブカルチャーの「民間軍事会社リョダン」グループか、またはその敵対勢力に属している。 騒ぎの主人公たちとなったティーンエイジャーたちは何者なのか。また、なぜ自分たちをそう呼ぶのだろうか。
ロシア各地のショッピングセンターや地下鉄の駅でここ数日、「民間軍事会社『リョダン』」を名乗る10代の子どものグループと、それに対抗する「オフニキ」という集団による乱闘騒ぎが起きている。騒ぎはすでにモスクワ、サンクトペテルブルク、ノボシビルスク、カザン、クラスノヤルスクで起きており、内務省の発表はまだ正確な数字はないものの、すでに約450人が拘束され、その大半が未成年であることが分かっている。

「オフニキ」とは何者か

略称「オフニキ」(ofniki)の元の名称は、一番流布している説によると「ニアサッカー・ファン」で、これに所属する面々はスポーツウェアの着用と短いヘアスタイルを好む。「オフニキ」は若者のグループで、外見が気に入らない相手を見つけると喧嘩を仕掛け、他の非公式グループとの騒ぎを起こすことも珍しくない。
© Sputnik / Anna Volkova / メディアバンクへ移行「オフニキ」という集団
Участники несанкционированного шествия националистов на Невском проспекте в Санкт-Петербурге - Sputnik 日本, 1920, 02.03.2023
「オフニキ」という集団

「民間軍事会社『リョダン』」とは一体何か

グループの名称は、日本の人気漫画「HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)」(H×H)に出てくる盗賊集団「幻影旅団」からとっている。アニメの盗賊らは自らを「クモ」と呼んでいるので、グループのメンバーも「パウーク(蜘蛛)」と自称している。長髪、ダボダボのトップス、服に「4」の数字入りの蜘蛛の絵がついていることで見分けられる。
なぜか「民間軍事会社リョダン」が何か特定の組織であるかのように受け止められてしまっているが、「リョダン」の代表の話では、もともとはSNS上の20人程度の小さなコミュニティだったが、2022年10月に行われた地元ミュージシャンのコンサートをきっかけに同じ興味を共有するグループが結成された。
とはいえ、この子らの集まりは民間軍事会社とは何の関係もない。リョダンの代表によれば、団体の発足は昨秋で、ちょうどその頃、ロシアで部分動員が行われていたのでジョークで「リョダン」(旅団)という名称を選んだという。代表は、こんなに大勢が参加することになるとは思わなかったと回想している。今回、これだけの事件に発展してしまったため、SNS上の全てのリョダンから「民間軍事会社」の部分の名称は削除されている。
© 写真 : Social Media「民間軍事会社リョダン」グループ
Молодые люди в балахонах с символом ЧВК Редан - Sputnik 日本, 1920, 02.03.2023
「民間軍事会社リョダン」グループ
ではなぜ「リョダン」という名称が出てきたのか。実は、10代の若者に人気の「ヒキコモリ・カイ」というロシア人デザイナーによるアパレルメーカーがあり、そこに「ゲンエイリョダン(幻影旅団)」という、蜘蛛のマークの入ったラインアップがあって、この服が「リョダン」のメンバーにもてはやされている、ということがわかってきた。

なぜ殴り合いになるのか

最近まで「リョダン」のSNS上の話題はアニメやミーム、コンピューターゲーム、地元のラッパーのコンサートに終始していた。ところがそのすべてが変わったのが2月19日。モスクワのショッピングモール「アヴィアパーク」で蜘蛛マークのついた服をきた「リョダン」の子どもたちに、「スポーツウェア」を着た一団が乱暴に突っかかってきたのがきっかけとなった。「リョダン」の子たちはこの時初めて攻撃者に対して反撃に出た。
騒ぎには警察が介入。アヴィアパークの殴り合い事件では数名が拘束され、事は刑事事件として捜査が始まるまでに発展した。しかも、拘束者が出たのはモスクワにどとまらず、26日はペテルブルクでも同じく、若者の何人かが他のグループの子の服装にいちゃもんをつけたことから殴り合いに。あまりに大規模な騒ぎに警察と内務省の特殊部隊OMONまで出動し、100人近い拘束者が出た。内務省の発表では騒ぎを起こしたのは14歳から17歳の子どもたちだった。
治安維持機関は、これを煽動したのは17歳の男子学生で、学生が15歳の少年の着ていた「リョダン」のシンボルが気に食わなくて、騒ぎに発展したのではないかと見ている。
10代の子どもたちによる同様の殴り合いはウクライナでも、キエフ、ハリコフ、リヴォフにあるショッピングモール付近で起きている。ウクライナ内務省はこうした子どもの集会は「ロシアが組織した作戦」だと規定した。
アニメ『Hunter x Hunter』の見過ぎ? 「リョダン」名乗る未成年グループがベラルーシとウクライナで相次いで摘発 - Sputnik 日本, 1920, 01.03.2023
アニメ『Hunter x Hunter』の見過ぎ? 「リョダン」名乗る未成年グループがベラルーシとウクライナで相次いで摘発
概して言えば、一般のロシア人はティーンエイジャーの現象には疎い。これが理由となって、理解が及ばないまま、名称の「民間軍事会社リョダン」の方にばかり着目してしまい、このグループは暴力的だ、殴り合いを挑発したと非難が始まった。
インターネット・コミュニケーションのための省庁間コンピテンスセンターで、政府と社会の間のデジタル対話を運営する非営利団体「ディアローグ(対話)」戦略ディレクション部のチモフェイ・V部長は、ショッピングモールの集団暴行事件に参加した「民間軍事会社リョダン」について、スプートニクからの取材に次のように答えている。
「ティーンエイジャーの一団がアニメのファンの子たちを殴ったのが事の始まりでした。その後、アニメの子たちは結束して、仕返しをしようと決めたんです。『民間軍事会社リョダン』はこの流れの中では事を起こした側ではなく、被害者です」
諸所の殴り合い事件で誰が先に手を挙げたのかを明らかにするのは、もう治安維持機関の仕事になる。
このニュースには、ロシア大統領府のペスコフ公式報道官もすでに反応を示しており、こうした「偽のサブカルチャーは若者に何の益ももたらさない」とコメントした。
政府寄りの非営利パートナーシップ「安全なインターネット・リーグ」のエカテリーナ・ミズリナ代表は今回の子どもの大規模な暴力事件の発生後、ロシアにおける子どもとの作業システム全体を見直すよう呼びかけた。
「若者に対する政策には失敗があります。子どもはただ、何もやることがないのです。だから持て余したエネルギーをSNSで持て囃されるトレンドに向けてしまう。子どものエネルギーは正しい方向に向けてあげなければならないんです」
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