【視点】対ロシア輸出全面禁止はまたしても単なる政治的な声明か?

© AFP 2023 / Andrew Harnik/PoolG7広島サミット
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日本の西村康稔経済産業大臣は、5月に開催されるG7(主要7カ国)広島サミットを前に話し合われるとされている対ロシア輸出の全面禁止に関する質問を受けたが、これに回答しなかった。
新たな対露制裁の可能性をめぐるこうした「秘密のベール」が何によって説明されるのか、「スプートニク」が専門家に尋ねたところ、返ってきたのは至って正当な答えであった。それは「言うは易し行うは難し」というものである。
実際、米国とその他のG7諸国の首脳が実際に対ロシア輸出のほぼ全面禁止について協議していることは知られていることである。

利害の対立

しかし、この発案が、現段階の制限措置ではまだ禁止されていないロシアとの商取引を継続している企業の反感を招くことは予想しうることである。
これに関連して、東洋学研究所のアンドレイ・ヴィノグラドフ主任研究員は、しかも、すでに禁止されている事項が遂行されていない場合も多く、また制裁を回避した取引も行われていると指摘する。
「すでに主要な制裁措置は講じられていますが、そこには大きな問題があります。それは、すでに下された決定を完全に実行するのは非常に難しいという点です。というのも、これまでに発動された対露制裁は、それを課した国にも損害を与えるものなのです。つまり、制裁を発動している国にとっての政治的、経済的利益をめぐる基本的な対立が生じているのです。従って、今回の新たな制裁に関する発言も、おそらく政治的な声明だと言えるでしょう」
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一方、ロシア政府付属の金融大学の専門家であるデニス・デニソフ氏も、同様の見解を示している。
「これは2014年に始まり、2022年2月24日の特殊軍事作戦の開始後に強化されたG7の戦略的政策です。しかし、ここ数年の状況を見れば、制裁の導入が思ったような効果を出していないことは明らかです。なぜなら、制裁は双方向性を持っており、自国の企業の市場シェアを狭めることになっているからです。市場からあるプレーヤーが撤退すれば、その場所は別の企業に占められます。これらの国々の企業が一定期間、ロシア市場での活動を行ってきて、それが優先的なものだった場合、撤退はその企業にとっても、その国の経済にとっても大きな痛手となるのです」

政府は賛成、経済界は反対

日本は対露制裁の一環として、600万円を超える新車の輸出を禁止しているが、今回新たに、右ハンドルの自動車および中古車の輸出の禁止を検討している。
しかしこれについてアンドレイ・ヴィノグラドフ氏は、この制裁もまた、的を外れたものになっていると述べている。
「というのも、ロシアには他の国々から自動車が入ってきています。たとえば、韓国や中国から、中古車ではなく新車が入ってきているのです。つまり、ロシアへの自動車輸出の禁止はまったく適切でないと言えます。なぜなら中古車は廃棄するしかなくなるからです。つまり、それで利益が出るどころか、損害が出るのです。日本の経済にとって、もちろん、それはそれほど深刻なことではないかもしれませんが、いずれにせよ、利益を失うことには変わりありません。
ですから、日本の新たな措置はどちらかといえば、示威的なものでしょう。なぜなら、経済的な効果はないのです。これはG7による最近の制裁パッケージに関しても完全に言えることであり、それはすべて経済界と政治との利害の対立によるものです。彼らは政治的にはロシアを『締め上げたい』と思ってるものの、ロシアは一定の品目において、輸入国としても輸出国としても、あまりにも重要なパートナーなのです。そこで制裁はそれを発動した国にも痛みを伴うものになるのです。つまり、国が制裁を推し進めても、経済界はそれを望まないという状況になっているのです」
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ロシアに代わる国を見つけるのは困難である。各国は代替国を模索しているものの、見つけるのには数年を要する。ロシアが今もなお、欧州諸国にエネルギー資源を供給し続けているのも、これとまったく同じ理由からである。
ヴィノグラドフ氏は、これは対露制裁を発動している国における政治と経済の利害の対立がまだ残っているということだと指摘する。

「日本、韓国、台湾はまったくその状況に当てはまります。これらの国々はエネルギー資源の大部分を中東から輸入しています。そのエネルギーは南シナ海を通過して運ばれています。しかし、南シナ海周辺の情勢は非常に危うく、不安定です。そこで、日本は南シナ海を通って供給されるエネルギーだけに依存し、ロシアのエネルギー資源やサハリンのプロジェクトを断念するようなリスクを負うことはできないのです」

そこで、ヴィノグラドフ氏は、今回の対ロシア輸出の全面禁止という発言は、G7広島サミットを前に、有権者に対して何らかの成果を見せようとする政治的な声明に過ぎないと述べている。
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一方、デニス・デニソフ氏は、かつてイラン、中国、北朝鮮、キューバ、ベネズエラといった国々も制裁を受けていたと指摘し、これらの国々も否応なしに自国の市場を広げ、技術を発展させ、いくつかの分野においては、敗北を喫するどころか、成功を収めたと述べている。
「こうした意味でよい例として挙げられるのが中国です。もっとも、中国に対して発動されたのは特定の部門への制裁であり、また戦略的性格のものではありませんでしたが。イランは軍需産業や自動車製造業で成功を収めました。イランの自動車は近く、ロシア市場にも入ってくるでしょう。日本について言えば、ロシア市場は日本の自動車メーカーにとって優先的なものではありませんでした。それでも、日本にとってもこれは販売の低下、課税ベースの縮小となります」
このように、制裁は国家の経済発展にとって、克服できない障壁ではなく、ある意味においては、国の産業の発展を促すものでもある。
つまり、ロシアの経済発展を最大限に弱体化するという制裁の究極の目的が達成されることはなく、加えて正常な国際貿易関係の雰囲気に害を与えるものであるとデニソフ氏は結論づけている。
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